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嘔吐・吐出の臨床症状 |
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鳥は、犬猫のように嘔吐・吐出をする前に流涎がみられるようなことはなく、突然嘔吐運動をして食物を排出します。嘔吐運動は、鳥は横隔膜ないため、消化管の逆蠕動、そ嚢の急激な収縮および腹部筋肉によって引き起こされます。
セキセイインコなどのインコ・オウム類では、口を開け、頚部をしゃくりあげるような運動をした後、食物を口腔内へ排出します。吐物量が少なければ、そのまま飲み込んでしまうこともありますが、多くの場合は頭部を水平に振ることによって、周囲へ吐物を撒き散らします。この時、吐物は胃液やそ嚢粘液を伴っているため、頭部の羽毛に
吐物が付着し、羽毛が不正に逆立ったようになります。(図参照)
ブンチョウなどのフィンチ類が吐出することは少ないですが、トリコモナス症や甲状腺腫で見られることがあります。吐出動作はインコ・オウム類とは異なり、頚部をしゃくりあげるような運動は小さく、頭部を水平に震わせる行動を何度かして少しずつ吐出します。これはフィンチ類のそ嚢は頚部の右側に位置し、口腔に近いため容易に食物を排出でき、吐出に大きな動作が必要ないためと考えられます。 |
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生理的な嘔吐・吐出 |
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鳥では嘔吐・吐出は必ずしも異常ではないことがあります。これは生理的に起こる現象で、2つのケースがあります。種差はありますが、インコ・オウム類のオスは、発情期を迎えると求愛行動の1つとして、食物を吐出してメスに与えるといった行動をとります。これは発情吐出と呼ばれ、人の飼育環境は発情しやすいため、オスは1年を通してこの行動をとる個体が多くみられます。またインコ・オウム類のメスは、発情期終了後、または抱卵期終了後に、雛鳥がいなくても育雛期になってしまう場合があります。この原因はまだわかっていませんが、この時期のメスは自分の趾や止まり木などに餌を吐き戻しては、またそれを食べるといった行動を繰り返します。 |
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嘔吐・吐出の鑑別診断 |
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嘔吐・吐出を示す疾患としては、そ嚢炎が有名ですが、その他にも様々な疾患によって嘔吐・吐出が起こります。また実際には、細菌性そ嚢炎は発生が少なく、その他の鑑別すべき疾患を知らなければ、これに結びつけてしまう可能性があります。では病院ではどのように鑑別診断しているのかを説明していきます。 |
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そ嚢液検査による鑑別診断(ファーストステップ) |
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そ嚢液検査により細菌叢の乱れが見られ、同時にマクロファージやヘテロフィルといった炎症性細胞の出現が見られた場合は、細菌性そ嚢炎を起こしている可能性があります。より診断を高めるためには、身体検査によりそ嚢壁の炎症の有無、培養検査などを行います。
そ嚢検査によりトリコモナスが検出されればトリコモナス症と診断できます。
そ嚢検査により仮性菌糸、酵母が検出されれば、通常カンジダ症と診断しますが、確定診断は培養によって菌種を同定しなければなりません。しかし臨床の場で真菌培養まではすぐには行いません。カンジダは、免疫力の低下や菌交代症、他の疾患に付随するといった2次的に出現することが多いため、主原因が他にないかどうか考慮する必要があります。 |
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糞便検査による鑑別診断(ファーストステップ) |
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糞便検査によっても仮性菌糸および酵母はしばしば検出されますが、2次的に増殖していることが多いため、すぐに主原因をカンジダ症とは診断せず、次の検査ステップも検討します。
メガバクテリアが検出されれば、メガバクテリア症と確定診断されます。 |
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併発症状からの鑑別診断(ファーストステップ〜セカンドステップ) |
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併発症状として尿酸の黄色化や緑色化といった色調異常が見られた場合は、肝機能異常が考えられるため、血液検査を行います。これによって肝酵素、総コレステロール、アンモニア、総胆汁酸の上昇が見られれば、肝疾患による嘔吐・吐出と診断します。また同時にX線検査を行い、肝肥大によって消化管が圧迫・変位していれば、これも嘔吐・吐出の原因となります。
併発症状として濃緑色便が見られた場合は、重金属中毒症が疑われるため、X線検査を行います。金属片が確認されれば確定診断されます。金属片が見つからなければ、その他の原因を疑いますが、血中亜鉛濃度の測定により高値が検出されれば亜鉛中毒症と診断しますが、小型の鳥では検査が困難となります。
併発症状としてそ嚢の発赤、腫脹といった炎症反応が見られた場合はそ嚢炎を疑い、そ嚢検査によってその原因を特定しますが、熱いお茶を飲んだり、幼鳥に高温のさし餌をしたことが原因で、熱傷を起こすこともあります。
併発症状として現在または過去に肥満があり、その他にも嘴過長、嘴・爪の出血斑、羽毛形成異常がある場合はX線検査を行い、肝肥大による消化管の圧迫・変位の有無を確認します。また血液検査によって肝疾患の確認も行います。
併発症状として脚の不全または完全麻痺やナックリングが見られた場合は、腎腫大による坐骨神経の圧迫を疑い、X線検査を行います。腎腫大が確認されれば、腎腫瘍を疑います。腎腫瘍による消化管の圧迫・変位、腎機能低下も嘔吐・吐出の原因となります。
併発症状として腹部膨大が見られた場合は、X線検査を行います。腹部膨大の原因には、生殖腺腫瘍、卵巣嚢腫が多く、これらによる消化管の圧迫・変位が嘔吐・吐出の原因となります。生殖腺腫瘍、卵巣嚢腫の診断は、X線造影撮影、超音波検査を行います。
併発症状としてそ嚢内に異物が触知されれば、これが嘔吐・吐出の原因と考えられます。 |
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一般検査で異常を欠く場合の鑑別診断(セカンドステップ) |
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一般検査(身体検査、そ嚢液検査、糞便検査)で特記すべき異常を欠く場合は、少数回の嘔吐・吐出であれば、一時的な寒冷や換羽による体力の低下などが考えられますが、複数回嘔吐・吐出を繰り返すようであれば、次の検査ステップに進みます。
X線検査により消化管の膨大とガス貯留が認められた場合は、排便が正常に行われていない可能性があるため、造影撮影にて通過の確認を行い、胃内異物や物理的閉塞、イレウス(腸閉塞)の診断を行います。
X線検査により腺胃または筋胃の片方または両方に拡張が見られた場合は、セキセイインコでは胃腫瘍の疑いがあり、オカメインコ、ヨウム、コンゴウインコなどでは腺胃拡張症の疑いがあります。
X線検査により筋胃内に多量のグリットが停留している場合は、グリット・インパクションを疑います。
血液検査により肝酵素、総コレステロール、アンモニア、総胆汁酸の上昇が見られれば、肝疾患による嘔吐・吐出と診断します。
血液検査により尿酸値の上昇、リン値の上昇、カルシウム値の上昇または低下、ALPの上昇(腎性二次性副甲状腺機能亢進症による)が見られれば、腎疾患による嘔吐・吐出と診断します。 |