鳥の麻酔

鳥を手術するには、麻酔をかけなければなりません。麻酔をかけることによって、鳥を不動化させ、鎮痛することができます。人や犬猫では、様々な麻酔法がありますが、鳥の麻酔は比較的シンプルな方法で行われています。この項では、鳥の麻酔法や麻酔前、麻酔中に行われることについて解説します。

1. 麻酔前処置

(1) 絶食

 鳥も麻酔によって吐き気が出ることがあります。またそ嚢が存在するため、内部の食物が麻酔によって逆流し、気道を閉塞する可能性もあります。よって麻酔前には絶食、絶水を行わなければなりません。手術時には、そ嚢および胃内の食物がなくなる必要があるため、6〜8時間以上の絶食が必要です。しかしこれには個体差があり、絶食前に大量に摂取していた場合は、12時間の絶食によってもそ嚢内に食物が残っている場合があるため、手術前には必ずそ嚢の触診を行います。絶食前にあまり食物を摂取していなかった場合は、絶食によって腸管内の便もなくなり、緑便を排泄する場合もあるため注意が必要です。また簡易処置のために麻酔をかける場合には、そ嚢内に食物が無ければすぐにかけることもあります。
 飲水の通過は速いため、絶水は1〜3時間前に行います。しかし多飲がある個体の場合は、そ嚢内に水が残っている場合があるため、手術前にはそ嚢の触診を行います。必要以上の絶水は脱水を起こし、循環血液量の低下を招くため危険です。

(2) 輸液

 人の場合、手術中の循環血液量の確保のために静脈内輸液を行うのが一般的です。しかしセキセイインコの ような小型鳥では、血管が細いため静脈の確保は困難です。よって手術前には、輸液剤の皮下投与を行います。静脈確保ができる大きさの鳥では、静脈内輸液をしながら手術を行います。

(3) 薬剤の投与

 手術前の血液凝固検査で凝固時間が長い場合には、手術の24〜48時間前にビタミンKの皮下または筋肉内投与を行います。
 抗生物質は、術中および術後の感染予防のために投与します。手術前の輸液と共に投与を行います。
 止血剤は、術中および術後の出血予防のために投与します。手術前の輸液と共に投与を行います。
 鳥の精神的な興奮や恐怖を取り除くために、鎮静剤を投与することもあります。

(4) ペインコントロール

 ペインコントロールとは、鎮痛のことです。鳥の術中のペインコントロールには、オピオイドを用いるのが一般的になってきています。麻酔直前または直後に皮下または筋肉内に投与します。
 術後のペインコントロールには、NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)を用います。

2. 麻酔法

 鳥の麻酔の導入および維持は、吸入麻酔薬が用いられるのが一般的です。最近では、注射麻酔薬は使われなくなってきています。吸入麻酔薬には、イソフルランで行うのが一般的ですが、セボフルランを使っている病院もあります。
 麻酔の導入は、透明で内部の確認が容易な箱(導入箱)を用います。箱の中に鳥を入れ、吸入麻酔薬を流入します。鳥は麻酔を吸うと、徐々に眠くなり寝てしまいます。
 麻酔の維持には、小型鳥では頭部が全て入るマスクを被せ、麻酔を吸わせます。中型〜大型鳥では気管チューブを気管内に挿入し、麻酔を吸わせます。麻酔の維持は、鳥の呼吸の状態に応じて麻酔薬の濃度を調節する必要があります。通常麻酔時間の経過に伴って、濃度が下げていくことが多いです。

3. モニタリング

 モニタリングとは、麻酔がかかっている鳥の状態を監視することです。手術中のモニタリングは、心拍数および呼吸数、体温の監視がメインとなります。大型鳥では、SPO2(血中酸素濃度)やETCO2(呼気中二酸化炭素濃度)の測定も行います。
 心拍数は、生体情報モニターという機械を使って測定しますが、呼吸は目視で行います。小型鳥では、1回の呼吸の換気量が少ないために機械での測定は困難です。呼吸数の変化だけでなく、呼吸の深さの変化も注意深く観察します。

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