飼い鳥の感染症

飼い鳥には、気を付けなければならない感染症がいくつかあります。以前は診断がつかなかった感染症も最近では遺伝子検査の発達のおかげで分かるようになってきました。しかし鳥の感染症は、日本ではワクチンも開発されておらず、また感染症の知識をもったペットショップも少ないため、売られている鳥が感染症を持っている可能性が多分にあります。よって飼い主さん自身が感染症に対する知識を身に付け、新しく鳥を買う時などは、症状が出ていないか十分に観察し、購入前に検査してあるかを確認したりする必要があります。
 この項では、飼い鳥の感染症について解説していきます。


飼い鳥の感染症
ウイルス性疾患 PBFD
BFD
PDD
ヘルペスウイルス感染症
アデノウイルス感染症
細菌性疾患 鳥結核症
ボルデテラ感染症
真菌性疾患 メガバクテリア症
アスペルギルス症
クラミジア性疾患 鳥クラミジア症
マイコプラズマ性疾患 マイコプラズマ病
寄生虫性疾患 クリプトスポリジウム症
トリコモナス症



ウイルス性疾患

ウイルス性疾患

PBFD (Pcittacine Beak and Feather Disease) オウム類の嘴・羽毛病
原因  PBFDはウイルス性疾患であり、Circovirus(サーコウイルス)の感染によって発起こります。PBFDではなく、PCD(Pcittacine Circovirus Disease;オウム類のサーコウルス病)と呼ばれることもあります。
 Circovirusは一般的にPBFDVと呼ばれます。PBFDVは直径16ナノメートルで、ゲノムは環状の一本鎖DNAです。病気を引き起こすウイルスとしては最も小さく、鳥以外の動物に感染することはありません。セキセイインコ等の小型インコ類、ローリー類に感染する変異株が存在します。
 PBFDVは嘴や羽毛の細胞に感染して障害を起こすだけでなく、免疫細胞に感染して免疫低下を引き起こし、細菌感染等の2次感染を引き起こします。
伝播  伝播は、PBFDが発症した親を繁殖に使うことは無いため、主に水平感染 となります。ウイルスは、糞便や脂粉内に排泄され、これを経口的に摂取、あるいは吸入することによって感染します。
 PBFDに感受性が高いのは、3歳以下の若齢の鳥で、3歳を過ぎると感染しにくくなります。
発生  多くのインコ・オウム類に発生がみられます。国内で最も多く発生がみられるのはセキセイインコですが、これは飼育数が多いためと考えられます。他にもコザクラインコ、ボタンインコ、ワカケホンセイインコ、セネガルパロット、ヨウム、バタン類(Cockatoo)などに時折みられます。筆者は、オカメインコの発生は経験したことがありません。
症状 p3-2_img02.jpg 多くが慢性感染であり、幼鳥の正羽発羽時または換羽に発症します。
 セキセイインコでは羽毛障害の発現にいくつかのパターンがみられ、ほぼ全身の羽毛が脱落する場合(ランナーと呼ばれる)、羽毛の部分的または散発的な脱羽がみられ、発羽した羽毛には羽毛形成不全がみられる場合、体幹羽毛には異常がみられないが、風切羽と尾羽にのみ脱羽および羽毛形成不全がみられる場合などがあります。羽毛形成不全には、羽軸壊死による未成長、羽軸内血液凝固、ねじれ、ストレスライン、変色などがあります。嘴形成不全は、中型・大型鳥ほどみられませんが、外観は栄養性嘴形成不全に類似します。
p3-2_img03.jpg その他の中型・大型鳥では、羽毛の部分的または散発的な脱羽がみられ、明らかな羽毛形成不全がみられることが多いです。嘴は、最初は粉羽が減少することにより光沢がみられるようになりますが、徐々に過長、ストレスライン、脆弱化といった嘴形成不全がみられるようになります。
 免疫能低下により、細菌、真菌、クラミジアなどの2次感染を起こします。セキセイインコに最も多いのは消化器症状で、下痢や尿酸色異常がみられることが多いです。中型・大型鳥に最も多い症状は口内炎です。口内炎による疼痛や嘴形成不全から摂食不全が起こり、徐々に衰弱することが多いです。
 急性感染を起こした場合、羽毛異常は発現せず、急性肝炎や貧血を引き起こし、多くが死亡します。急性感染は、ヨウムの幼鳥に多く発生します。
診断  典型的症状により、多くが暫定診断可能ですが、確定診断には遺伝子検査(PCR)によるPBFDVの検出が必要です。検体には血液や新生羽を用いますが、PBFDを発症した個体は常にウイルス血症を起こすため、血液を用いるのが一般的です。羽毛や糞便での検査は、結果が不安定になります。
治療  PBFDVの増殖を抑制する抗ウイルス剤は存在しないため、免疫賦活を目的とした治療を行います。
予後  治療法が確立されていない病気のため、治療を諦められてしまうことが多いですが、セキセイインコでは早期発見および免疫賦活治療により完治する例も多いです。しかし発症して時間が経ってしまった例では、回復は困難です。


BFD (Budgerigar Fledgling Disease)  セキセイインコ雛病
原因 BFDはウイルス性疾患であり、Papovaviridae Polyomavirus(パポバウイルス科 ポリオーマウイルス)の感染によって起こります。Polyomavirusは一般的にAPV(Avian polyomavirus)と呼ばれ、エンベロープを有さないDNA型ウイルスです。APVは、1980年代初期に南東および南中アメリカおよびカナダのオンタリオで、セキセイインコにおいて最初に認められました。それ以前にはフレンチモルトと呼ばれていました。
発生  セキセイインコだけでなく、コザクラインコ、ボタンインコ、メキシコインコ、ワカケホンセイインコ、コンゴウインコ類、オオハナインコ、バタン類など多くのオウム目鳥に感染します。海外では繁殖場での大量死が問題となっていますが、国内での被害はほとんど報告されていません。しかしこれは国内において幼鳥の死亡原因としてあまり認識されていないことも原因となっている可能性があります。
 発症例の多くは10日から25日齢の幼鳥で致死的な経過を示し、羽毛異常を示す例は、臨床の場でみることは少ないです。
症状  ウイルスの暴露により多くの鳥が感染しますが、成鳥のほとんどは一時的なウイルス血症を起こすのみで、発症するには至らないことが多いです。
 セキセイインコの幼鳥が発症した場合、異常羽毛の発現、皮膚の変色、腹部膨満、腹水の貯留、肝壊死と散在性の出血を伴う肝肥大、小脳感染による頭振などがみられ、致死的な経過をとります。すべての鳥が死亡するわけではなく、生存した個体においてはPBFDに類似する羽毛異常がみられ、特に風切羽と尾羽の欠損や未成長がみられます。
 コザクラインコ、ボタンインコにおいては1歳齢まで感染の影響を受けます。しかし多くの羽毛異常発現症例ではPBFDの同時感染を起こしており、徴候の発現がBFDによるものなのかの判断は困難です。
診断  血液やクロアカスワブを検体とした遺伝子検査(PCR)を行います。
治療  幼鳥の発症例で、腹部膨大、腹水の貯留、肝肥大、頭振などの症状がみられた場合は予後不良です。
 羽毛異常は、PBFDとの混合感染がある場合がほとんどなので、PBFDの治療に順じます。
 無症状個体に陽性が検出された場合は、一過性のウイルス血症であるため、3ヵ月後に再検査を行います。通常は治療の必要はなく陰転しますが、キャリアとなる場合もあります。


PDD (Proventricular Dilatation Disease) 腺胃拡張症
原因  PDD(Proventricular Dilatation Disease)は、 ボルナウイルスによって引き起こされる感染症です。腺胃の神経節炎による麻痺により腺胃平滑筋の弛緩が起こり、腺胃が拡張する病気です。
発生  多くのインコ・オウム類にみつかっていますが、ヨウム、バタンオウム、コンゴウインコ類、オカメインコなどに時折発生がみられます。
症状  PDDは末期まで症状を出さないことが多く、嘔吐・吐出がみられた時にはかなり腺胃が拡張していることが多いです。腺胃が拡張する原因が消化管の神経麻痺であるため、通過障害も多くみられ、糞便量が減少します。この他にも脚の麻痺や痙攣、毛引き症がみられることもあります。
診断  レントゲン検査にて腺胃が拡張しているのを確認します。(図:腺胃が拡張したヨウム)
p3-2_img04.jpgまた血液検査にてCPKの上昇がみられるのも特徴的です。
 PDDの診断は、今までは組織内の神経節炎の確認によって行われていました。病変はそ嚢にもでるため、海外では麻酔下にてそ嚢のバイオプシ ー(一部切り取る)を行い、病理検査を行っていました。しかし近年、PDDがボルナウイルスであることが判明したことから、今後PCR(遺伝子検査)で診断できるようになる可能性もあります。しかし今のところ有効な検体は分かっておりません。
治療  PDDの根本治療は不可能であり、疑われた場合は対症療法を行います。
 使用される薬剤は、神経節炎を抑えるために非ステロイド系抗炎症役を用います。その他に対症療法として胃粘膜保護剤、消化器機能調整剤、抗生物質、抗真菌剤なども用いられます。
 食事は食べるようであれば、PDD用処方食を用います。


ヘルペスウイルス感染症
原因  ヘルペスウイルスは、直径180-200nm、エンベロープを有する二本鎖DNAウイルスです。ヘルペスウイルスには、いくつかのタイプがありますが、飼い鳥で見られるヘルペスウイルス感染症には、パチェコ氏病とボウシインコ気管炎や乳頭腫があります。
 ここではパチェコ氏病について解説していきます。
発生  多くの インコ・オウム類に感染しますが、感染した時の致死率が高く、何の症状も示さずに死亡することが多いため、パチェコ氏病であったかを確認される例が少く、国内での発生率は不明です。
伝播  ウイルスは、糞便、呼吸器および眼の分泌物中に排泄されます。ウイルスを経口的に摂取、または吸入することによって感染します。
 感染は主にキャリア(不顕性感染)となった鳥から排泄されたウイルスが原因です。
症状  潜伏期間は、5-14日間ですが、中には数週間の場合もあります。多くの例で、何ら症状を示さず突然死します。症状を発現した場合には、食欲低下、下痢、尿酸の黄色から緑色化、多尿、脱水がみられます。時に嘔吐、出血性下痢、痙攣などがみられます。
診断  ヘルペスウイルスは遺伝子検査が可能ですが、血液、糞便、クロアカスワブを検体として遺伝子検査を行っても、検出されることは極めて稀であるため、生前診断を付けることは、困難です。
 急性感染した場合には、血液検査に異常が現われる前に死亡することが多いです。すぐに死亡せず症状が発現した場合には、肝酵素の上昇、貧血、白血球減少症がみられます。
 レントゲン検査では、肝臓肥大、腎臓肥大、脾腫がみられることがあります。
治療  症状が発現し、本症が疑われる場合には、抗ウイルス剤、肝庇護剤、2次感染を防ぐための抗生物質の投与を行います。
 アメリカでは、ワクチンが開発されていますが、本邦では入手することはできません。


アデノウイルス感染症
原因  アデノウイルス感染症は、トリアデノウイルスによって引き起こされます。アデノウイルスは、エンベロープを持たない65-90nmの二本鎖DNAウイルスです。
発生  臨床上診断されることは稀で、剖検時に偶発的に見つかります。コザクラインコ、ボタンインコ、セキセイインコ、オカメインコ、ボウシインコ、オオバタン、メキシコインコ、コンゴウインコ、ビセイインコなど多くの種で発生が報告されています。
伝播  ウイルスは、糞便、呼吸器の分泌物中に排泄されます。ウイルスを経口的に摂取、または吸入することによって感染します。また介卵感染による垂直感染も知られています。
 感染は主にキャリア(不顕性感染)となった鳥から排泄されたウイルスが原因です。
症状  潜伏期間は1-2日と考えられており、食欲低下、膨羽、沈うつ、下痢、クロアカ出血などの症状を示し、死亡することもあります。
診断  トリアデノウイルスは、遺伝子検査が可能ですが、検出されることは極めて稀と考えられ、有効な検体も分かっていません。多くの場合、剖検時に肝炎、膵炎、腸炎、結膜炎、脳炎に関連してみつかります。
治療  臨床上診断されることは極めて稀であるため、治療法は見つかっていません。

細菌性疾患

鳥結核症
原因  鳥結核症は抗酸菌症とも言われ、マイコマクテリウムによって引き起こされる慢性感染性疾患です。主な病原菌種は、Mycobacterium avium complex(MAC)、M.genavenseです。
 人獣共通感染症で、ヒト後天性免疫不全症候群(AIDS)患者で播種性結核を引き起こします。
発生  鳥結核症は世界的な風土病で、特に水禽類、キジ類、ハト類、スズメ類、インコ・オウム類、猛禽類にみられます。飼い鳥でも多くの鳥種で発生しており、セキセイインコやオカメインコでも報告があります。
伝播  感染鳥の糞便中に排泄された菌を摂取または吸入することによって感染します。
症状  本症は慢性消耗性疾患であり、典型的な症状は無く、何となく元気が無い、膨羽、嗜眠、下痢、軟便、多尿、尿酸の黄色化、腹部膨大、軽度の呼吸促迫などです。
診断  マイコバクテリウムは、遺伝子検査が可能であるため、糞便、血液、クロアカスワブを検体として検査を行います。しかし菌の排泄は断続的であり、また糞便中に菌が存在してもDANの抽出がうまく行かない場合もあり、1回の検査では診断できない場合もあります。
 レントゲン検査では、腸管膨大、肝肥大、腎肥大がみられることがあります。
 血液検査では、白血球、肝酵素の上昇もみられますが、必ずしも起こるわけではありません。
治療  治療は、ヒトの非定型抗酸菌症に準じた治療が行われますが、耐性菌が発生しやすく、治療に反応することは、極初期以外では期待できません。


ボルデテラ感染症
原因  ボルデテラ感染症は、Bordetella aviumによって引き起こされる上部呼吸器の感染症です。
発生  最も感受性の高い飼い鳥は、オカメインコです。この他にもフィンチ類やセキセイインコ、コンゴウインコでも報告されています。
伝播  病原体は、糞便、呼吸器および眼の分泌物内に排泄され、これを経口的に摂取または吸入することによって感染します。
症状  最も特徴的な症状は、”ロックジョー”です。これは額関節が硬直し、顎がロックしたように開かなくなるため、このように呼ばれています。この症状と同時に眼瞼が完全に開かなくなり、眼を細めたような顔になります。また鼻炎や副鼻腔炎、結膜炎、口内炎なども併発します。
診断  特徴的な症状から本症を診断できますが、ボルデテラは遺伝子検査が可能なため、後鼻腔スワブ、鼻腔内洗浄液、眼洗浄液などを検体として菌の検出を行います。
治療  抗生物質の投与を行います。ロックジョーになってしまった場合、早期であればリハビリによって回復する場合もありますが、進行すると治らなくなります。

真菌性疾患

メガバクテリア症
原因 p3-2_img05.jpg 原因菌:マクロハブダス・オルニトガスター(Macrorhabdus ornithogaster)
メガバクテリアは、グラム陽性の大型桿菌状微生物であり、酵母の一種で、アナモルフ(無性型)の子嚢菌類に新しい属として提案されています。鳥の胃の中に住む酵母であることから、AGY(Avian Gastric Yeast)とも呼ばれています。感染部位は胃であり、特に中間帯周囲に感染し、重度の胃炎や胃拡張を起こ します。
伝播  伝播は水平感染であり、一般的には親鳥が雛鳥に給餌する際に吐き戻した食物の中のメガバクテリアを摂取することによって感染 します。その他では、同居している感染鳥の糞便中に排泄されたメガバクテリアを経口摂取することによって感染します。
発生  10年以上前よりセキセイインコに広く蔓延しており、特に幼鳥の被害が大きい です。感染する鳥種は多く、コザクラインコ、ボタンインコ、オカメインコ、ブンチョウ、キンカチョウ、カナリヤ、ニワトリ、 ダチョウなどに見られます。
症状  症状は、嘔吐・吐出のほか、全粒便 (穀粒がすり潰されていない状態)、軟便や下痢、血便などがみられます。食欲が低下し、餌は殻を剥くだけで、飲み込まないこ ともあります。
診断  顕微鏡による糞便検査にて、メガバクテリアの検出を行 います。糞便への排泄量と症状の強さには、必ずしも比例関係があるわけでは ありません。またメガバクテリアは胃粘膜内に侵入するため、排泄量が少なくても、必ず対処しなければなりません。
治療  メガバクテリアの治療には抗真菌剤が有効です。補助的に粘膜抵抗強化剤(胃薬)、胃腸機能調整剤(吐き気止め)、抗生物質なども併用します。
予後  発見が早ければ治ることが多いですが、発見が遅れ、胃の障害が大きいと メガバクテリアが糞便中から消失しても症状が治らない事もあ ります。中には慢性胃炎から胃腫瘍に発展したと考えられる症例も多く見つかっています。
 糞便中にメガバクテリアが消失しても、胃粘膜内に侵入して残っていることも多いため、長期間の投与が必要です。


アスペルギルス症
原因  アスペルギルス属の真菌が病原菌であるが、この中でも最も重要な種は、Aspergillus fumigatusです。アスペルギルスは、エンドトキシンを産生することでも知られ、環境中に普通に見られる真菌です。
 感染の成立には、環境中の胞子量、環境条件、鳥の年齢や様々なストレスによる免疫力の低下が関与しています。環境中の胞子は、高温多湿により真菌が増殖するのに伴い増加します。感染が成立しやすい環境条件は、清掃不足による不衛生、換気不足による胞子の停滞、乾燥による粘膜防御力の低下などがあります。若齢や高齢の鳥は免疫力が低いため感染しやすいですが、好発年齢というわけではありません。また急な環境の変化、換羽、繁殖、輸送、環境温度の低下または上昇などによるストレスによって免疫力の低下を起こした場合、感染が成立しやすくなります。
発生  多くの飼い鳥、家禽を含めた多くの鳥類に発生がみられます。飼い鳥では、オカメインコ、セキセイインコ、アケボノインコ、シロハラインコ、ヨウム、白色オウム類、ボウシインコ、コンゴウインコなどのオウム目鳥に多くみられ、輸入規制により飼育数が減ってはいますが、キュウカンチョウにも好発します。家禽類では、家庭内飼育のウズラに好発します。またペンギンや猛禽類にもしばしば発生がみられます。
伝播  伝播は、糞便で汚染されたケージや飼料から発生した胞子を吸入することによって起こり、感染鳥から直接伝染することはありません。胞子は通常でも空気中に存在しますが、健康な鳥は通常この胞子に耐性を持ちます。しかし何らかの原因による免疫力低下は、感染成立の原因となります。またアスペルギルスは、卵殻を通じて胚に感染することが出来ます。
症状  感染初期では、ほとんど無症状ですが、感染が進行すると、呼吸促迫、開口呼吸、乾性の咳、声の変調といった呼吸器症状が特徴的です。重症例では呼吸器症状は持続的にみられますが、中等度の例では、発作的に症状がみられる場合もあります。
p3-2_img06.jpg レントゲン検査では、感染初期では異常を検出することはできません。中期以降では、軽度の気嚢炎像が確認できるようになります。重症例では、重度の肺炎や気嚢炎が確認できます。
 血液検査では、感染初期ではほとんどの症例で異常を示しません。中期以降では、白血球増多症、単球増多症、ヘテロフィルの中毒性変化、ガンマグロブリン血症が確認されます。
診断  アスペルギルス症の診断は、気嚢スワブの遺伝子検査を行うのが確実な方法です。成書では、喉頭スワブや後鼻孔スワブ、クロアカスワブの遺伝子検査にて診断を行うと記述しているものもありますが、遺伝子検査は感度が極めて高いため、口腔内や糞便内に存在する感染とは無関係のアスペルギルスも検出される可能性があるため、結果の信頼性が低くなります。気管内スワブは、結果の信頼性が高いですが、麻酔をかけた上で、細いスワブを口腔内に触れないように気管内に挿入しなければならないため、大型鳥以外は行うことができません。気嚢スワブは、麻酔下にて体側部を穿刺して、後気嚢内にスワブを挿入してサンプリングを行いますが、負担が大きいためあまり実施されません。
 確定診断を行うもう一つの方法として、内視鏡による気嚢内検査があります。海外では積極的に行われていますが、国内ではまだ一般的ではありません。
治療  治療は、抗真菌剤の内服および注射による全身投与、ネブライザーによる局所投与を行います。
予後  感染した場合、完治するのが難しい病気です。一度良くなっても再発することが多いため、継続した検査、治療が必要になります。

クラミジア性疾患

鳥クラミジア症
原因  鳥クラミジア症は、クラミジア科に属するChlamydophila psittaci(クラミドフィラ シッタシ)が原因です。C.psittaci は、細胞内でのみしか増殖できないという独特の増殖環(細胞内偏性寄生)をもっており、感染性はあるが増殖能のない型(基本小体)と感染性はないが増殖能のある型(初期小体;網様体)にわかれます。感染した基本小体は細胞内で初期小体へと移行し、2分裂増殖した後中間体を経て、ふたたび基本小体へ移行します。クラミジアの大きさは基本小体では大腸菌の1 /4 程度ですが、初期小体は大腸菌とはぼ同程度です。
 クラミジアは人獣共通感染症であり、人に移るとオウム病と呼ばれます。
伝播  伝播は、感染鳥からの便が乾燥、飛沫した物、あるいは呼吸器、眼からの分泌物を吸入、あるいは摂取したことによって生じます。感染の機会が最も多いのは、巣内で感染親鳥が、雛鳥に餌を与える際に起こると考えられています。またクラミジアは、乾燥糞便中で数ヶ月間感染性を保っており、抱卵中に卵殻を通じて胚に感染します。さらにオウム類、アヒル、カモメ、およびニワトリでは、垂直感染も起こることが知られています。
 幼鳥で感染した場合、巣立ちした若鳥の体内で、クラミジアは肝臓や脾臓に存在して断続的に排泄を行い、いわゆるキャリアとなります。キャリアとなった鳥は、ストレスによってクラミジアを大量に排泄し、感染源となります。
発生  鳥クラミジア症は、届出伝染病ではないため発生率は不明です。(人のオウム病は届出伝染病です)C.psittaciはおよそ100種類の鳥類から分離されていますが、臨床の場では、オカメインコ、セキセイインコ、ラブバード類などのインコ類、特に幼鳥にしばしば認められます。その他のオウム目でない飼い鳥のC.psittaci感染は、ハトおよび九官鳥で最も多く発生しています。アメリカのCDCの発表では、カナリアやフィンチではあまり発生していないといわれていますが、国内でジュウシマツが、鳥からの感染源の10%になっているという報告もあるため、フィンチ類でも注意が必要です。
 鳥がC.psittaciとの接触から発症するまでには、最短で3日ですが、すぐに発症するとは限らず、数週間かかる場合もあります。しかし中には、接触後キャリアとなり、数年後に発症する場合もあります。鳥の種類、病原性、感染容量、治療の程度または予防処置によって、急性または慢性症状を示し、場合によって死亡します。
症状

p3-2_img07.jpg 鳥クラミジア症を発症した際の症状は特異的ではなく、様々な病態が観察されます。嗜眠、食欲低下、膨羽、脱水などの一般症状のみを呈して、他の病気と鑑別がつかず、本症の疑いがもてない場合もあります。一般的には、流涙や結膜炎などの眼の症状、くしゃみ、鼻汁や肺炎、気嚢炎など呼吸器症状ですが、必発症状ではありません。下痢、未消化便等の消化器症状も多くみられ、緑から黄緑色の尿酸の排泄(図参照)を伴います。また貧血や脳炎による神経徴候を呈することもあります。
 レントゲン検査にて肺炎・気嚢炎像のほか、肝臓、脾臓の腫脹も特徴的です。血液生化学検査では、AST、LDH、総胆汁酸の上昇、白血球増多症を伴います。

p3-2_img09.jpgp3-2_img08.jpg
診断  本症を常に効果的に検査する方法は現在のところ存在しません。これは国内で依頼できる検査が抗原検査のみだからです。C.psittaciを保有する鳥は、発症している、発症していないにかかわらず、常に便中にクラミジアを排泄するわけではなく、また常にクラミジア血症を起こすわけではありません。よって一度の検査で陰性であっても、疑わしい症状がある場合には、本症の疑いを除外することはできません。信頼する結果を得るには、複数回の再検査を必要とします。
 現在最も推奨される本症の検査は、遺伝子検査(PCR)によるクラミジアの検出であり、検査精度は99%以上です。検査材料としては、糞便、クロアカスワブ、血液の3つがあります。推奨される検体は、糞便またはクロアカスワブです。血液検体のみでは、保菌検査のみとなり、排菌しているかどうかを確認することができません。糞便の場合は、断続的に排菌されるため、3日分以上の便を集めて検体とすると検出率が上がります。
治療  クラミジアは細胞内に寄生するため、浸透性の良い抗生物質を選択しなければなりません。第一選択薬は、テトラサイクリン系抗生物質であり、一般的にはドキシサイクリンが使用されます。ドキシサイクリンは、オキシテトラシクリンやクロールテトラサイクリンよりも、脂溶性が高く、血中濃度が上がり易い薬剤です。
 ドキシサイクリンを投与する際には、副作用を注意しなければなりません。ドキシサイクリンには免疫抑制作用があり、ドキシサイクリン耐性菌による2次感染や菌交代症によるカンジダの出現に注意しなければなりません。
 ドキシサイクリンの投薬期間ですが、一般的に45日間が提唱されています。ドキシサイクリンは静菌製剤であり、クラミジアが増殖する際のタンパク合成を阻害します。つまりドキシサイクリンは、増殖過程にあるクラミジアに対して効果があり、休眠状態にあるクラミジアを殺すことはできません。クラミジアはマクロファージに取り込まれた後、休止状態に入ることがわかっています。マクロファージの寿命は人で45日であり、ドキシサイクリンを45日間投与する意義は、マクロファージ内の休止期にあるクラミジアが排泄されるまで続けるということです。しかし鳥のマクロファージの正確な寿命はわかっておらず、もし人よりも寿命が長ければ体内に残る可能性があります。また骨髄や肝臓、脾臓内で休眠状態に入ってしまった場合、生涯感染の可能性があります。
 テトラサイクリン系の抗生物質は、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄などの金属イオンとキレートを形成することにより腸管からの吸収が悪くなるため、これらの薬剤と併用してはなりません。また投薬する時は、ボレー粉やカットルボーン、ミネラルブロック、ミネラル添加グリット、塩土などの飼料は与えないようにしなければなりません。

マイコプラズマ性疾患

マイコプラズマ病
原因  マイコプラズマ病は、マイコプラズマによって引き起こされる呼吸器の感染症です。特に重要なのは、Mycoplasma gallisepticum、M. synoviae、M. meleagridisです。
 マイコプラズマは、単独では不顕性感染となり発症することはあまりないですが、細菌が混合感染すると発症します。
発生  ニワトリでの発生がよく知られていますが、飼い鳥ではオカメインコ、セキセイインコ、ラブバード、ブンチョウで一般的に見られ、ボウシインコ、コンゴウインコ、バタン類でも発生が報告されています。
伝播  病原体は、呼吸器および眼の分泌物内に排泄され、これを経口的に摂取または吸入することによって感染します。また介卵感染による垂直感染も起こります。
症状  最も特徴的な症状は、結膜炎、鼻炎、副鼻腔炎です。進行すると肺炎、気嚢炎を起こすこともあります。また関節炎を起こすこともあります。
診断  マイコプラズマは遺伝子検査が可能です。本症が疑われる場合には、後鼻腔スワブ、鼻腔内洗浄液、眼洗浄液などを検体としてマイコプラズマの検出を行います。
治療  マイコプラズマに感受性のある抗生物質の投与を行います。

寄生虫性疾患

クリプトスポリジウム症
原因  寄生虫の一種で、原虫に分類されるクリプトスポリジムが胃に感染することによって起こります。
発生 コザクラインコ、特に5歳以上になってから発症することが多いです。
症状  発症する前は無症状ですが、発症すると慢性頑固な吐き気、嘔吐がみられます。吐き気、嘔吐は、朝にみられることが多く、粘稠性の高いネバネバした液を吐き出します。食欲は低下し、徐々に衰弱していきます。
 吐物を誤嚥することにより、肺炎を起こすことがあります。
診断 p3-2_img10.jpg 糞便のショ糖浮遊法検査により、クリプトスポリジウム のオーシストを検出します。
 



 レントゲン検査では、中間帯(腺胃と筋胃の間)の拡張がみられることが多いです。(レントゲン写真参照)

p3-2_img12.jpgp3-2_img11.jpg
治療  人を含め多くの動物に感染するクリプトスポリジウムがみつかっていますが、未だ駆虫薬は開発されていません。人では、効く可能性がある薬剤として、ニタゾキサニドとパロモマイシンが使用されますが、コザクラインコの治療にもこれらを用います。しかし投薬により、完全に駆虫することはできず、投薬中は糞便への排泄の減少がみられますが、投与を中止すると、また排泄量が増えてきます。
 よって胃腸薬や吐き気止め、抗生物質、抗真菌剤など対症的な薬剤を使い、胃炎吐き気をコントロールします。
予後  発症すると完治することはないので、徐々に衰弱します。


トリコモナス症
原因 p3-2_img13.jpg原因寄生虫:Trichomonas gallinae、Trichomonas sp.
 トリコモナスは、原虫に分類される寄生虫です。鳥のそ嚢に感染し、そ嚢炎を起こします。
 トリコモナスには、弱毒株と強毒株があり、弱毒株では無症状で経過することもあり生ます。強毒株に感染した幼鳥は、重篤な症状に発展します。
発生  ブンチョウの幼鳥に頻発します。その他オカメインコの幼鳥、ジャンボセキセイインコに時折みられます。寄生虫の発生には地域差があります。
症状 p3-2_img14.jpg 吐出、吐き気 がみられ、食欲が低下します。
 口内炎、食道炎、そ嚢炎を起こし、口腔内に粘液の分泌がみられます。粘膜の壊死により、潰瘍病変や膿の形成がみられます。
診断  そ嚢液 検査にてトリコモナス・トロフォゾイトを検出します。
治療  治療には、抗トリコモナス剤を用います。炎症が重篤な場合には、抗生物質、抗真菌剤、止血剤なども併用します。
 食欲が廃絶した幼鳥では、入院治療が必要となります。 
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