飼い鳥の食事

 鳥たちを飼育していく上で、どのような食事を与えたら良いのかと悩まれている方も多いと思います。医食同源とも言われ、食事は病気や寿命に大きく関わってきます。それだけに皆さんの関心も高く、飼育書や雑誌、インターネット、個人間の情報交換など色々な情報が飛び交っています。ではどの情報が一番正しいのでしょうか?誰が最も鳥の食事について分かっているのでしょうか?その答えは、実は無いのです。鳥たちは、生き物です。足し算や引き算に明確な答えがあるのとは違います。色々な意味で、どの情報も、誰が言っていることも正しくもあり、また間違いもあるのです。それは人の食事を見てもらえれば分かると思います。国や地域どころか、各家庭によって食べている物が異なります。これは間違っているのでしょうか?いいえ、正しくもあり、そして間違いもあるでしょう。私たちは、自らの責任において食事を取っているのです。しかし鳥たちは違います。自らの責任において食事を取るということはできません。鳥たちは、飼い主に与えられた物の中からしか選ぶことができないのです。では鳥たちの食事については、誰が責任を持つのでしょうか?ペットショップの店員でしょうか?飼育書を書いた人でしょうか?いいえ、違います。これは当然飼い主である皆さんです。インターネットに書いてあるからと鵜呑みにしたり、売っているから安心と思ったりしてはいけません。皆さんが得られた情報に対して、理論的に正しいのか、そうでないのかを区別する知識を付け、鳥たちのより良い食事を考えていかなければならないのです。
 それではどのように鳥たちの食事を考えていけばよいのでしょうか。この項では、鳥たちの食事の考え方、そしてどのような栄養が必要か、栄養の過不足があるとどのような病気が起こりうるのかについて説明していきたいと思います。

飼い鳥の食事の考え方

 飼い鳥の食事を考える上で基本となることが6つあります。飼い鳥と言っても多数の種類があり、全て同じ食事というわけではありません。それぞれの鳥種に対して、次の6つの事項を念頭におきながら考えなければなりません。

(1) 野生での食性

 鳥の食事を考える時の第1段階は、まず野生での食性を知ることです。飼い鳥のほとんどがオウム目かスズメ目であり、多くの種が飼育されています。この種の違いというのは、実はかなりの違いがあります。動物の分類学では、目、科、属、種(亜種)の順に分類されています。たとえばセキセイインコであれば、オウム目、インコ科、セキセイインコ属、セキセイインコとなります。キバタンは、オウム目、オウム科、オウム属、キバタンとなります。この2羽を比べてみると住んでいるところは同じでも、実は科から異なる違う種類の鳥ということになります。これは食肉目で言えば、イヌ科とネコ科があるのと同じくらい違うのです。つまり鳥は、種によってそれぞれ異なった食性を持っており、これを踏まえた上で食事は何を与えればよいのかを考えなければならないということです。鳥の食性の分類には次のようなものがあります。(表1)

表1:鳥の食性の分類

食性 例(種名)
穀食性
granivore
セキセイインコ
オカメインコ
カナリヤ


ゴンゴウインコ
ヤシオウム

ルリコンゴウインコ
アケボノインコモドキ
果食性
frugivore
ベニコンゴウインコ
キソデボウシインコ
蜜食性
nectarivore
ゴシキセイガイインコ
オトメズグロインコ
雑食性
omnivore
ナナクサインコ
クルマサカインコ
キバタン
ブンチョウ

飼い鳥の食性には、大きく分けて穀食性、果食性、密食性、雑食性の4つがあります。

食性 主な鳥種
穀食性 種子類を主食としている鳥です。この仲間には、セキセイインコ、オカメインコ、カナリヤなどがいます。
果食性 果物や種実類を主食としている鳥です。この仲間には、ベニコンゴウインコ、キソデボウシインコなどがいます。
蜜食性 花粉や花密を主食としている鳥です。この仲間には、ゴシキセイガイインコ、オトメズグロインコなどがいます。
雑食性 植物性の食物の他に虫も補食する鳥です。この仲間には、ナナクサインコ、クルマサカインコ、キバタン、ブンチョウなどがいます。

鳥種によっては、特定の物しか食べないものもいますが、中には食物の利用状況によって2つ以上のカテゴリーから食物を採食するものもいます。たとえば、コンゴウインコやヤシオウムは、果物や種実類だけでなく種子類も常食しています。またルリコンゴウインコやアケボノインコモドキでは、種子類、種実類、果物、花、花密など多くの食物を常食しています。
 では飼育下において、この野生で食べているものが一番良いのでしょうか?実は必ずしもそうではないのです。まず当然ながら野生で食べている物を全てそろえることは不可能です。またもしそろえられたとしても、飼い鳥は野生とは環境や運動量、発情の程度も異なりますので、エネルギー量や蛋白質量などが適切かどうかが分かりません。ですので食性は鳥の食餌の根本ではありますが、野生のものが一番良いというわけではありません。ではどのように食性を参考にすればよいかというと、たとえばセキセイインコに果物が必要かというと、実はそんなに必要性はありません。逆に消化管が果物に含まれる多量の果糖に慣れていないため、過食をすると腸内細菌の狂ったり、水っぽい便をすることになります。またゴシキセイガイインコに種子類を与えると、筋胃が種子を磨り潰す構造になっていないため、消化管に負担をかけることになります。このように与えてはいけないもの、また与えた方がよいというものを考える時に、野生での食性を参考にすると良いでしょう。

(2) 既知データの外挿

 鳥類の中で、栄養要求量が既にわかっている鳥は、家禽です。家禽とは、ニワトリやウズラなどの産業動物のことです。家禽は最も古くから栄養要求量が研究され、農林水産省農林水産技術会議事務局が日本飼料標準として栄養要求量をまとめています。特にニワトリにおいては、成長期と産卵期、さらに採卵用、食肉用で栄養要求量が異なるため、企業レベルでも研究が進んでいます。この既知のデータを飼い鳥の食事構成に外挿することは、飼い鳥の栄養要求量を考える上で、最も有効な方法です。外挿とは、元々分かっているデータを、分かっていない部分へ当てはめることです。特に必須アミノ酸やビタミン、ミネラルの要求量を推測するのに使われます。
 しかし家禽の栄養要求量を利用する時に注意しなければならないことがあります。それは、飼い鳥と家禽では根本的に飼養目的が異なっていることです。家禽の飼料は産業動物であるため、いかに早く成長させるか、いかに多くの卵を産ませるか、いかに栄養のある卵を生ませるかといった成長率や生産率の向上を目的としています。つまり飼い鳥の目的であるいかに病気にせず、いかに長生きさせるかという点についてはあまり考えられていません。もちろん家禽は、飼い鳥と食性や体格も異なるため、維持要求量がわかっていたとしても、全て外挿するわけにはいきません。

(3) 科学的な栄養要求量の算定

鳥の食事を考える上で最も参考にしたいのが、飼い鳥それぞれの栄養要求量です。現在アメリカではセキセイインコとオカメインコを用いて研究がなされていますが、いくつかの要求栄養素が分かっているだけで、まだしばらくは正確な栄養要求量を得ることはできないでしょう。ましてや各飼い鳥の要求量など、まだまだ先の話です。今後の研究に期待しましょう。
 飼い鳥の栄養要求量の推奨量が発表されていますので、現在はこのデータを参考にすると良いでしょう。(表2)

表2 オウム目、スズメ目飼鳥に推奨される飼料100gあたりの栄養含有量(成鳥の維持量)

蛋白質 (%) 12
脂 肪 (%)
エネルギー (kcal) 300
ビタミン
ビタミンA (IU) 500
ビタミンB (mg) 1.0
ビタミンD (IU) 100
パントテン酸 (mg) 1.5
ビタミンE (mg)
ビオチン (mg) 0.02
ビタミンK (mg) 0.1
葉酸 (mg) 0.2
ビタミンB (mg) 0.5
ビタミンB12 (μg) 1.0
ビタミンB (mg) 0.1
コリン (mg) 100
ナイアシン (mg) 7.5
ビタミンC
ミ ネ ラ ル
カルシウム (mg) 500
マンガン (mg) 7.5
リン (mg) 250
鉄 (mg) 8.0
ナトリウム (mg) 150
亜鉛 (mg) 5.0
クロール (mg) 150
銅 (mg) 0.80
カリウム (mg) 400 ヨード (mg) 0.03
マグネシウム (mg) 60 セレン (mg) 0.01
必 須 ア ミ ノ 酸
リジン (mg) 600 アルギニン(mg) 600
メチオニン (mg) 250 スレオニン (mg) 400
トリプトファン(mg) 120 AVIAN MEDICINE(1994)より一部改変して引用

(4) 消化管の解剖学的構造と生理機能

 鳥種によって消化管の解剖学的構造と生理機能が異なっており、これも食事を構成する際に考慮しなければなりません。
 例えば穀食性の鳥は、大きな筋肉質の筋胃を持っており、内部にグリット(砂)を停留させ、硬い食物をすりつぶすことができます。しかし果食性や蜜食性の鳥の筋胃は小さく、筋肉が穀食性の鳥ほど発達しておらず、食物をすり潰す力が弱いのです。よって果食性や蜜食性の鳥に硬い物を多く与えたりすると、胃の機能に障害をきたす可能性があります。
 また消化管の吸収率も鳥種によって異なっています。特に蜜食性の鳥では長い腸絨毛を持っており、食物中の糖を効率よく吸収しています。この特徴から鉄の吸収が促進され、ローリーやキュウカンチョウにヘモクロマトーシスが多くなる原因といわれています。

(5) 飼鳥家、獣医師の経験

 鳥に限らずほとんどの人に飼われている動物の食事は、最初は経験によって見出されてきました。しかし現在では、多くの動物の科学的な栄養要求量の算定がなされ、総合栄養食が作り出され与えられています。
 現在多くの飼い鳥、特に小型インコ類やフィンチ類に使用されている穀類や種子類も最初は経験や食性によってのみ与えられてきました。飼い鳥の栄養要求量が研究されている現在では、これら穀類は必須アミノ酸やビタミン、ミネラルの含有量を除けば、鳥の栄養要求量に近く、ある意味適切な食事とも言えます。またボレー粉やカットルボーンといった経験から見出された食事も、今でも使用されており、これも穀類の欠点を補うよい補助食品であることが分かっています。経験だけで見出された食事は科学的な根拠はありませんが、それなりの歴史があり、これを食事の構成に取り入れるのは意外に重要なことと言えます。

(6) 嗜好性

 もし栄養的に完全な食事があったとしても、鳥がこれを食べなければ何の意味はありません。鳥の舌には味蕾が少なく、味覚は人ほど感じることはできないと考えられていますが、実際にはかなり味に対しては敏感であり、はっきりとした好みを示します。食事の構成にはやはりこの嗜好性も重要となってきます。また採食行動は鳥の楽しみの一つとも考えられ、多くの種類の食物や味、色彩なども考えた方がより良いと言えるでしょう。

 


 

以上の6つが飼い鳥の食事を考える上での必須条件となります。これらの条件を踏まえて、私たちは鳥たちの食事を考えていかなければなりません。しかし多くの方が、そんな難しい話はいいから、何を与えればよいかだけ教えて欲しいと思うかもしれません。しかしこれらの基本的な考え方を持っていれば、間違った食事を与える事を防ぐことができるのです。例えば、なぜ種実類を常食させてはいけないのかは、脂肪分の要求量は4%程度だからだということから分かりますし、ビタミン剤を与えなければならないのは、種子類にはほとんどビタミンが入っていないからだということが分かるのです。つまり、なぜ与えなければならないのか、なぜ与えてはならないのかということ知ることで、鳥たちの食事をより良いものすることができるのです。

栄養素と過不足による病気

 動物が栄養素には、たんぱく質、脂肪、炭水化物、ビタミン、ミネラルの5つがあり、5大栄養素と呼ばれています。この5つの栄養素をバランスよく取らなければならないというのは、皆さんご存知だと思います。ではこれら5大栄養素とはどんなものなのでしょうか。そして多く摂り過ぎたり、不足したりするとどうなるのでしょうか?この項では、栄養素がそれぞれどのような役割を果たし、そして過不足があるとどのような病気になってしまうのかを説明していきます。

(1) たんぱく質

 たんぱく質は、筋肉、皮膚、内臓、血液、羽毛、嘴、爪など体を構成しているほとんどの部分を構成する成分であり、体はたんぱく質でできているといえます。たんぱく質は、アミノ酸から構成されています。アミノ酸には多数の種類があり、中でも体内で合成できず、必ず食物から摂らなければならないものを必須アミノ酸といいます。鳥の必須アミノ酸は、一般的にアルギニン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、バリン、トリプトファン、スレオニンといわれています。またグリシン、ヒスチジン、プロリンも体内で十分に合成が出来ないため、必須といわれています。
 動物性、植物性を問わず食物には、たんぱく質が含まれています。私たち人間は、主に肉類、魚介類、卵、大豆製品、乳製品からたんぱく質を摂取しています。では鳥はというと、普段食べている種子類に含まれるたんぱく質しか摂取していません。種子類には10%前後のたんぱく質が含まれています。この量は、鳥の要求量を満たしてはいます。しかし換羽期や成長期には食物中に約20%のたんぱく質が必要であるといわれており、種子だけではこの量を満たすことはできません。また必須アミノ酸量はどうかというと、実はこれも種子類だけでは、普段の要求量でさえ満たすことができていません。
 それでは、たんぱく質や必須アミノ酸が不足するとどうなるのでしょうか。たんぱく質の不足は主に成長期、つまり雛鳥の時に起こります。成長期には、食物中に約20%のたんぱく質が必要です。不適切なあわ玉のみで育てたり、あるいは1日の摂取量が足りないと、成長の遅延や自立の遅れがみられるようになります。必須アミノ酸の不足は種子食のみで飼育していると起こります。不足すると代謝の低下によって肥満が起こりやすくなります。また鳥種によっては羽毛、嘴、爪の形成不全を起こすことがあります。
 たんぱく質の過剰も起こることがあります。これはペレットが主食になっている場合に、普段からたんぱく質の多いタイプ(ブリーダー、ハイポテンシイなど)を常食させることによって起こります。たんぱく質の過剰は、肝疾患、腎疾患、腫瘍の発生率を上昇させる可能性があります。

(2) 脂肪

 脂肪も体内の構成成分としても大切な働きをしています。体内では、コレステロールやリン脂質が生体膜の主要構成成分として使われたり、リポ蛋白という形で、脂肪の体内での運搬体として重要な働きをしています。また、脂溶性ビタミンであるビタミンA・D・E・Kの吸収にも必要とされます。 脂肪は摂りすぎると体内に脂肪として貯えられ、肥満の原因となりますので、摂取させる際にはその量と質が問題となってきます。量はもちろん過剰摂取を避けるために含有量を知るということですが、質というのは含有する脂肪酸の種類ということです。脂肪は腸から吸収される際に中性脂肪という形で体内に取り込まれます。中性脂肪がエネルギーとして使われる場合には、分解されてグリセリンと脂肪酸になります。この脂肪酸は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の3つに分けられます。 これらはそれぞれ性質や作用が異なりますが、質として注目したいところは、不飽和脂肪酸のなかでも必須脂肪酸と呼ばれるリノール酸、α−リノレン酸、アラキドン酸の含有量です。必須脂肪酸は体内で合成できないため、これが多く含まれる食物を知る必要があります。
 脂肪は、ほとんどの食物に含まれていますが、食物の種類によってかなり含有量が異なります。私たち人間は、豚や牛の脂、バター、サラダ油など日常的に多くの脂肪を摂取しています。では鳥はというと、種子類や種実類に含まれている脂肪を摂取しています。種子類の脂肪含有量は2〜5%程度で、これは要求量を丁度満たす量となっています。しかし種実類には25%程度の脂肪が含まれており、常食した場合、多量に脂肪を摂取することになります。ここで問題となるのが質と量です。種子類には適量の脂肪が含まれていますが、必須脂肪酸の含有量が少ないです。逆に種実類は、多量の死亡が含まれていますが、その分必須脂肪酸も多く含まれています。このことから種実類は常食をさせてはいけないが、必須脂肪酸を補う目的で、適量を与えると良いということが分かります。
 脂肪の摂取過剰は、第1に肥満と高脂血症を引き起こします。このことから2次的に脂肪肝 症候群が引き起こされます。脂肪肝 症候群によって肝機能障害が引き起こされると、羽毛の変色(黄色化や白色化)、羽毛の変形、ダウンフェザーの伸長、嘴・爪の過長と出血斑などがみられるようになります。この他にも、心疾患や動脈硬化、脂肪沈着部位の毛引きや自咬などがみられることもあります。
 必須脂肪酸の不足は、皮膚炎、腎障害、小腸繊毛の形成障害などを引き起こすことがあります。特に皮膚状態の悪化は、毛引き症や自咬症に発展する可能性もあります。

(3) 炭水化物

炭水化物は、最も大切なエネルギー源です。炭水化物は、消化によってブドウ糖やガラクトースなどの単糖類に分解され、小腸から吸収されて肝臓に入り、多くはグリコーゲン(エネルギーの貯蔵庫)として肝臓に貯えられ、一部はブドウ糖として血液中に入ります。 空腹時や運動時には、血液中のブドウ糖だけではエネルギー源として不足するので、肝臓に貯えられたグリコーゲンが分解されて、血糖値を一定に保ちます。血糖値や体温の高い鳥は、ブドウ糖の消費が激しいため、常に食物を摂取しています。糖質は摂りすぎると脂肪として体内に貯えられるため、肥満の原因になるため食べ過ぎはよくありません。

(4) ビタミン

 ビタミンは、生体の機能を正常に維持する為にたんぱく質、脂質、糖質の栄養素の体内における代謝を円滑に行う為に必要な栄養素であり、体の調子を整えるなど、体内の潤滑油のような働きをしています。ビタミンには、大きく分けて脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンの2つがあります。脂溶性ビタミンは、脂質に溶けて吸収されるのですが、脂質の取りすぎは、余分な脂質が吸収されず、排泄されると共に脂溶性ビタミンも排泄されるため、逆に吸収が悪くなります。また脂溶性ビタミンは、過剰に与えると中毒症を引き起こすことがありますので注意が必要です。

脂溶性ビタミン

1.ビタミンA
ビタミンAには、動物性食品に含まれるレチノールと緑黄色野菜に含まれ体内でビタミンAに変わるβ−カロチンがあります。ビタミンAは皮膚や粘膜を正常に保ち、夜盲症、視力の低下を防ぎます。またガンの予防にも効果があると言われます。種子類、種実類にはほとんど含まれていません。
 不足すると皮膚、口腔粘膜、呼吸器、泌尿器などの障害を起こし、細菌感染に対する抵抗力が低下します。長期的な欠乏は、腎尿細管粘膜の障害を起こし、痛風の原因となります。
 過剰になると元気食欲の低下、嘔吐、骨障害、脂肪肝を起こすことが知られています。ビタミン剤の過剰投与には注意が必要です。

2. ビタミンD
ビタミンDは、カルシウムの働きを調節するビタミンです。カルシウムやリンの腸管吸収を促し、骨形成を促進する働きをします。紫外線を浴びることによりビタミンDは、体内で7‐デヒドロコレステリンから合成することができますが、多くの家庭で日光浴は十分にできていないため、不足しがちになります。
 不足すると幼若鳥では、骨の成長障害を起こしクル病を起こします。また不足した状態での過産卵は骨軟化症を引き起こします。
 過剰になると、血中のカルシウム濃度が高くなるために、腎臓にカルシウム沈着が起こり、腎 症を引き起こします。また動脈にカルシウム沈着が起こり動脈硬化を起こすこともあります。

3. ビタミンE
ビタミンEは、老化の原因と考えられている過酸化脂質がつくられるのを妨げる働きを持つビタミンです。また血行を促進し、生殖腺の発達を促進します。種子・種実類には要求量を必要なビタミンEが含まれていますので、不足することはまれです。
 欠乏すると、白筋症による筋萎縮によって歩行異常が起こるといわれています。過剰症は、臨床上認められていません。

4. ビタミンK
 ビタミンKは、血液凝固因子の合成に働くビタミンで、緑黄色野菜に含まれるK1と微生物による合成から作られるKがあります。種子・種実類には含まれており、また腸内細菌が合成していますので、通常不足することはありません。しかし脂肪の過剰摂取、消化不良による脂肪吸収不全、抗生物質投与による正常腸内細菌叢の減少が起こると欠乏症が起こります。欠乏すると、血液が固まり難くなり、出血しやすくなります。また打撲によって内出血を起こしやすくなります。

水溶性ビタミン

1. ビタミンB1
ビタミンB1は、糖質が分解されエネルギーに変換される際に働く酵素の補酵素としての役割を持っています。種子類には含まれており、また腸内細菌が合成していますので、通常不足することはありません。しかし幼鳥期にビタミンB1が不足した状態で、炭水化物に偏った挿し餌を与えると欠乏症が起こります。欠乏症は、多発性神経炎(脚気)を引き起こします。

2. ビタミンB2
 ビタミンBは、脂質代謝および糖質代謝に関わっています。 脂肪摂取量が多くなると必要量が多くなります。
 不足すると口内炎・口角炎になりやすくなります。また幼鳥期の不足は、趾曲りを引き起こします。

3. ナイアシン
 ナイアシンは、糖質・脂質・蛋白質の代謝に不可欠なビタミンです。不足すると、舌の炎症や食欲不振などの症状がでることがあります。

4. ビタミンB6
ビタミンBは、蛋白質の代謝と関係するビタミンです。蛋白質は体内でアミノ酸に分解され、必要な蛋白質に再合成されますが、この時働くのがビタミンBです。 また脂質代謝にも関係し、リノール酸やリノレン酸を細胞膜に必要なアラキドン酸に変える働きをしています。 それ以外にも赤血球のヘモグロビンの合成、免疫機能を正常にするためなどにも働いています。

5. ビタミンB12
ビタミンB12は、葉酸と協力して赤血球のヘモグロビンの合成を助けます。不足すると悪性貧血を起こします。
 また不足は正常な細胞分裂の障害または遅延を起こし、たんぱく質合成の障害を起こします。その結果、成長の遅延、神経障害、羽毛形成不全、体脂肪蓄積などを起こします。

6. 葉酸
ビタミンB12と協力して、造血に働くビタミンです。葉酸が不足すると赤血球や白血球の産性が悪くなり、その結果悪性貧血が起こります。

7. パントテン酸
パントテン酸は、コレステロールとの関係が深く、善玉コレステロールを増やし心臓や血管の病気の予防に役立ちます。不足すると脂質代謝異常やペローシスを起こします。

8. ビオチン
ビオチンは、パントテン酸と一緒に酵素を作り、糖質のエネルギー代謝に関与しています。また、脂肪酸やコレステロールの代謝、蛋白質の代謝にも関与しています。

9. コリン
コリンは、血管を拡張させ血圧を下げるアセチルコリンの材料となっています。また細胞膜を作るレシチンは不飽和脂肪酸とリン脂質とコリンが一緒になって作られています。コリンは脂肪肝を防ぎ、肝臓の働きを高めてくる働きもあります。不足により、高血圧、脂肪肝を起こします。

10. ビタミンC
ビタミンCは、コラーゲンの生成に不可欠なビタミンです。コラーゲンは細胞の接着剤として働き血管、各種器官、筋肉を作ります。また抗酸化作用を持ち、ビタミンEと共に活性酸素を除去する働きをしています。その他にも鉄や銅の吸収を助けたり、ヘモグロビンの合成を助けることで、貧血予防にも働きます。

(5) ミネラル

ミネラルは、体の構成部分になったり、機能維持や調子を整える重要な働きを持っています。

1. カルシウム
 カルシウムは骨の構成成分のほか、体液の構成成分、筋肉の収縮、神経の伝達などの重要な役割を持っています。種子・種実類にはほとんど含まれていないため、ボレー粉やカットルボーンなどの鉱物飼料を摂取させる必要があります。
 カルシウムの利用には、リンの摂取量と関係があり、カルシウム:リンが、1〜2:1が最も効率よく利用されます。よってカルシウム摂取過剰にも注意が必要です。
 不足すると、幼鳥期ではクル病、成鳥では過産卵の雌に骨軟化症骨折がみられます。過剰は、他のミネラル、ビタミンの吸収を阻害し、ペローシスの原因になることがあります。

2. リン
リンは、リン酸カルシウムとして、骨の構成成分となります。またリン脂質として、羽毛や嘴の構成成分となります。また血液中ではリン酸塩として血液の酸やアルカリを中和する働きをします。その他、ATPなどの高エネルギーリン酸化合物を作り、エネルギーを貯える働きをします。飼い鳥の食物には十分なリンが含まれており、不足することはありません。

3. マグネシウム
 マグネシウムは、リン酸マグネシウムとしてカルシウムと共に骨に存在します。それ以外にも筋肉、脳、神経に存在しています。不足すると、骨軟化症、高血圧、動脈硬化などが起こりやすくなります。

4. ナトリウム
 ナトリウムは、塩化ナトリウム(いわゆる塩)、重炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウムとして体液中に存在します。細胞の外液の浸透圧を一定に保つために調整する働きをします。種子・種実類、野菜類にはほとんど含まれていません。飼い鳥のナトリウム源としては、塩土があります。しかし過剰摂取する場合は、塩分過剰となるため注意が必要です。
 不足すると精神的不安定となり、毛引き症の原因となります。過剰になると、胃炎、高血圧、動脈硬化を引き起こします。

5. カリウム
 血球や細胞の内液に多く存在しています。ナトリウムと共に細胞内の浸透圧の保持、酸アルカリ平衡の保持に重要な働きをしています。食物中に多く含まれており、不足することはありません。

6. 鉄
 鉄は、赤血球のヘモグロビンの材料となります。食物中に含まれる量で、不足することはありません。ローリー類やキュウカンチョウ、オオハシなどの一部の鳥種は、過剰になるとヘモクロマトーシスを起こします。

7. 亜鉛
 亜鉛は、DNAや蛋白質の合成、免疫機能、生殖器機能に関与しています。また血糖値を調整するインシュリンの合成にも必要なミネラルです。不足はみられませんが、古い亜鉛メッキケージの使用により、過剰症が起こることがあります。過剰になると、性格が攻撃的になり、毛引き症の原因となります。

8. マンガン
マンガンは、カルシウムやリンと同様に骨の石灰化に必要なミネラルです。また関節を丈夫にする結合組織の補酵素としての働きもあります。食物中に不足することはないのですが、カルシウム過剰摂取による吸収不全で欠乏症になることがあります。欠乏により、ペローシスを起こします。

9. ヨード
 ヨードは、甲状腺ホルモンの成分となるミネラルです。種子・種実類、野菜類では必要量を補いことが出来ないため、主食がペレットで無い場合には、必ず補わなければならない栄養素です。不足すると、甲状腺腫や甲状腺機能低下症を起こし、呼吸困難や肥満、羽毛形成不全、換羽不全などを起こします。過剰に与えると、逆に甲状腺への取り込みが悪くなりますので、過剰に補わないよう注意する必要があります。

さいごに

 食事の考え方、そして栄養素の重要性についてご理解頂けましたでしょうか。いろいろと難しいお話ばかりで、分かり難かったかもしれません。でもそれだけ栄養とは難しく複雑なものなのです。今回説明しただけでも、まだ全然足りないくらいなのです。今回の説明で、皆さんが鳥たちの食事に対して少しでも認識を改めて頂ければ幸いです。

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