非感染性疾患

脂肪肝症候群
原因  脂肪肝症候群は、人でいうメタボリック症候群の中の一つです。食べ過ぎ、高脂肪食、蛋白質不足、運動不足、甲状腺機能低下症などによる肥満が原因となります。鳥は肝臓に脂肪が付きやすく、肥満時には脂肪肝症候群を起こすことが多いです。
 過食は雌に多くみられ、その原因の多くは持続発情によるもので、産卵のために摂取量が増大します。さらに持続発情は、肝臓での卵黄および卵白蛋白、脂質産生が継続して行われ、肝機能の低下を招きます。また騒音や睡眠不足、同居鳥との不和といった環境ストレスも過食の原因となり得ます。
 高脂肪食のものには、ヒマワリの種や麻の実、サフラワー、カボチャの種などがあります。これらの種実類はコザクラインコやオカメインコ以上の大きさの鳥には常食させている方が多いので注意が必要です。
 蛋白質不足や必須アミノ酸不足は、産卵や換羽といった蛋白質要求量の増える時期に大きく影響します。食物中の蛋白質が少ない場合、蛋白質摂取量を増やすには食物を多く摂取しなければならず、結果として肥満の原因となります。
 運動不足はケージ内にいる時間が多いためなのは言うまでもありません。野生では日に数キロから数十キロの移動を行いますが、これに見合う運動を飼い鳥にさせるのは、一般家庭環境では困難です。肥満による運動不耐性が出ると、さらに動かなくなります。
 甲状腺機能低下症は、ヨード不足によって起こります。甲状腺ホルモンはヨードがないと作ることができません。甲状腺ホルモンは代謝率を上げるホルモンなので、不足すると代謝率低下により、肥満が起こります。
発生  セキセイインコ、オカメインコ、コザクラインコにしばしばみられます。特に肥満した雌に多いです。
症状 p4-15_img06.jpg 肝機能障害が軽度な症例は無症状なことが多いですが、肝機能障害が進行したり、高脂血症が進行すると羽毛変色、羽毛形成不全がみられます。セキセイインコでは青色羽毛が白色または黄色に、緑色羽毛が黄色に変化します。オカメインコでは、全身羽毛が黄色に変色し 、黄色羽毛症候群(Yellow Feather Symdrome)とも呼ばれます。コザクラインコでは、緑色羽毛が赤色に変化します。まp4-15_img07.jpgた同時に羽毛のハタキ化、ダウンフェザーの伸長、風切羽および尾羽が細くなる、ストレスラインといった羽毛形成不全もみられることが多いです。
 その他嘴の過長、硬度低下、出血斑などの嘴形成不全もみられます。重症例では、出血傾向による血便、皮下出血、肺出血等がみられることもあります。



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診断  肝生検が実施できれば確定診断ができますが、現在のところ筆者は行っていません。よって特徴的な羽毛、嘴異常の症状がみられた場合は、レントゲン検査にて肝肥大の確認と血液検査にてAST、GGT、LDH、総胆汁酸、NH3、TCHO、TGの上昇をもって暫定診断を行います。しかし肝細胞の障害が軽微、またはすでに肝硬変や肝萎縮を起こしている場合は、血液検査で肝機能の上昇がみられないこともあるため、胸腹部の皮下脂肪や皮膚のたるみの確認、バンブルフットの有無などの過去の肥満歴から推測する必要もあります。
 重度の肝肥大では超音波検査にて診断できることもあります。
治療  治療は、肝機能改善、高脂血症改善を主に行います。出血傾向が見られる場合には、止血剤、ビタミンKの投与を行います。
 また肥満個体に対しては、食事制限による減量、運動時間を増やすようにします。
 嘴の過長がある場合には、トリミングを定期的に行います。
予後  脂肪肝症候群は、肝障害が軽度であれば治る病気ですが、肝障害が大きい場合、症状の軽快はみられますが、完治しないこともあります。投薬の効果は、換羽後の正常羽毛出現によって確認できますが、換羽が起こらない場合や換羽後に再び異常羽毛が生えてくる場合には、継続して投薬を行う必要があります。


甲状腺機能低下症
原因  甲状腺原発の機能低下ではなく、主にヨード不足による甲状腺ホルモン分泌量の低下をさします。甲状腺ホルモンは換羽や羽毛形成に関与しており、低下によって脱羽や羽毛形成不全を示します。また代謝率の低下は肥満を招き、脂肪肝症候群の原因にもなると考えられています。
発生  ブンチョウ、セキセイインコ、オカメインコに多くみられます。
症状  セキセイインコでは羽毛変色、羽毛形成不全が多くみられ、青色羽毛は白色または黄色に、緑色羽毛は黄色に変化します。体幹部羽毛はハタキ状となりまとまりがなくなります。またダウンフェザーの伸長もみられ、特に腰部に目立つようになります。
 ブンチョウでは脱羽が多くみられ、特に頭部に発羽不全が 多くみられます。また換羽が起こらないこともしばしばで、羽毛の汚れや擦り切れが目立つようになります。 しかしブンチョウの場合は、性ホルモンの分泌過多でも脱羽が起こることが疑われています。

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診断  主に特徴的な症状から暫定的に行われますが、血液検査をして血液中の甲状腺ホルモン測定を行い、診断することもあります。
 レントゲン検査で甲状腺肥大がみられる場合は、甲状腺腫性機能低下症です。しかしTSH(甲状腺刺激ホルモン)に反応できないか組織の残存がない場合は,萎縮性機能低下症がみられることもあります。
 代謝率が低下するため、血清コレステロール、トリグリセライドの上昇がみられます。また脂肪肝症候群を併発した場合は、肝酵素の上昇もみられます。
治療  ヨード剤および甲状腺ホルモン剤の投与を行います。
予後  甲状腺機能低下症による羽毛異常の治療も脂肪肝症候群と同様に、投薬の効果は換羽が起こるまで確認できません。換羽が起こらない場合や換羽後に再び異常羽毛が生えてくる場合には、継続して投薬を行う必要があります。


栄養性羽毛・嘴形成不全
原因  幼鳥期の栄養不足、特に蛋白質および必須アミノ酸不足が主な原因です。市販あわ玉にお湯をかけただけのものをさし餌することで発生することが多いです。また親鳥の栄養不足やさし餌の与え方の間違いによる摂取不全、さし餌回数不足による一日摂取量不足も原因となります。
 胃腸炎、胃腫瘍、膵外分泌不全、肝疾患等の消化器疾患による蛋白質消化吸収不全も原因となります。
発生  多くの飼い鳥に発生します。
症状 p4-15_img12.jpg 全身羽毛に羽毛変色、羽毛形成不全、脱羽がみられます。体幹羽毛はハタキ化し、羽毛辺縁に変色が出ることが多いです。また幼鳥では風切羽と尾羽の成長異常がみられることが多く、未成長、羽軸内血液凝固、ねじれ、ストレスラインなどがみられ、ウイルス性羽毛障害と類似することがある。
 嘴は脆弱化し、過長することが多いです。インコ類では上嘴の湾曲が緩やかとなり、下嘴との交合不全を起こします。フィンチ類では上嘴先端の過長、上嘴両側が張り出すように変形し、下嘴は内側へ巻き込むように変形します。
診断  特徴的な症状が確認された場合は、食事内容を聴取し、蛋白質および必須アミノ酸摂取量の確認を行います。また消化器疾患を示す症状がみられないかも確認します。
 インコ類に、ウイルス性羽毛障害と類似する症候がみられた場合は、遺伝子検査を行い鑑別する必要があります。
治療  治療は食事改善、アミノ酸製剤および肝庇護剤などの投与を行います。消化器疾患のある場合には、その治療も行います。
 また嘴の形成不全は、定期的にトリミングを行います。
予後  栄養性羽毛形成不全も投薬の効果は換羽が起こるまで確認できません。換羽が起こるまで継続して投薬を行う必要があります。
 嘴形成不全を一度起こすと、栄養が改善されても変形が治らないこともあり、この場合は定期的なトリミングが必要となります。
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