感染性疾患

PBFD (Pcittacine Beak and Feather Disease) オウム類の嘴・羽毛病
原因  PBFDはウイルス性疾患であり、Circovirus(サーコウイルス)の感染によって発起こります。PBFDではなく、PCD(Pcittacine Circovirus Disease;オウム類のサーコウルス病)と呼ばれることもあります。
 Circovirusは一般的にPBFDVと呼ばれます。PBFDVは直径16ナノメートルで、ゲノムは環状の一本鎖DNAです。病気を引き起こすウイルスとしては最も小さく、鳥以外の動物に感染することはありません。セキセイインコ等の小型インコ類、ローリー類に感染する変異株が存在します。
 PBFDVは嘴や羽毛の細胞に感染して障害を起こすだけでなく、免疫細胞に感染して免疫低下を引き起こし、細菌感染等の2次感染を引き起こします。
伝播  伝播は、PBFDが発症した親を繁殖に使うことは無いため、主に水平感染 となります。ウイルスは、糞便や脂粉内に排泄され、これを経口的に摂取、あるいは吸入することによって感染します。
 PBFDに感受性が高いのは、3歳以下の若齢の鳥で、3歳を過ぎると感染しにくくなります。
発生  多くのインコ・オウム類に発生がみられます。国内で最も多く発生がみられるのはセキセイインコですが、これは飼育数が多いためと考えられます。他にもコザクラインコ、ボタンインコ、ワカケホンセイインコ、セネガルパロット、ヨウム、バタン類(Cockatoo)などに時折みられます。
症状 p4-15_img01.jpg 多くが慢性感染であり、幼鳥の正羽発羽時または換羽に発症します。
 セキセイインコでは羽毛障害の発現にいくつかのパターンがみられ、ほぼ全身の羽毛が脱落する場合(ランナーと呼ばれる)、羽毛の部分的または散発的な脱羽がみられ、発羽した羽毛には羽毛形成不全がみられる場合、体幹羽毛には異常がみられないが、風切羽と尾羽にのみ脱羽および羽毛形成不全がみられる場合などがあります。羽毛形成不全には、羽軸壊死による未成長、羽軸内血液凝固、ねじれ、ストレスライン、変色などがあります。嘴形成不全は、中型・大型鳥ほどみられませんが、外観は栄養性嘴形成不全に類似します。
p4-15_img02.jpg その他の中型・大型鳥では、羽毛の部分的または散発的な脱羽がみられ、明らかな羽毛形成不全がみられることが多いです。 ヨウムでは赤色に羽毛が変色します。嘴は、最初は粉羽が減少することにより光沢がみられるようになりますが、徐々に過長、ストレスライン、脆弱化といった嘴形成不全がみられるようになります。
 免疫能低下により、細菌、真菌、クラミジアなどの2次感染を起こします。セキセイインコに最も多いのは消化器症状で、下痢や尿酸色異常がみられることが多いです。中型・大型鳥に最も多い症状は口内炎です。口内炎による疼痛や嘴形成不全から摂食不全が起こり、徐々に衰弱することが多いです。
 急性感染を起こした場合、羽毛異常は発現せず、急性肝炎や貧血を引き起こし、多くが死亡します。急性感染は、ヨウムの幼鳥に多く発生します。
診断  典型的症状により、多くが暫定診断可能ですが、確定診断には遺伝子検査(PCR)によるPBFDVの検出が必要です。検体には血液や新生羽を用いますが、PBFDを発症した個体は常にウイルス血症を起こすため、血液を用いるのが一般的です。羽毛や糞便での検査は、結果が不安定になります。
治療  PBFDVの増殖を抑制する抗ウイルス剤は存在しないため、免疫賦活を目的とした治療を行います。
予後  治療法が確立されていない病気のため、治療を諦められてしまうことが多いですが、セキセイインコでは早期発見および免疫賦活治療により完治する例も多いです。しかし発症して時間が経ってしまった例では、回復は困難です。


BFD (Budgerigar Fledgling Disease)  セキセイインコ雛病
原因 BFDはウイルス性疾患であり、Papovaviridae Polyomavirus(パポバウイルス科 ポリオーマウイルス)の感染によって起こります。Polyomavirusは一般的にAPV(Avian polyomavirus)と呼ばれ、エンベロープを有さないDNA型ウイルスです。APVは、1980年代初期に南東および南中アメリカおよびカナダのオンタリオで、セキセイインコにおいて最初に認められました。それ以前にはフレンチモルトと呼ばれていました。
発生  セキセイインコだけでなく、コザクラインコ、ボタンインコ、メキシコインコ、ワカケホンセイインコ、コンゴウインコ類、オオハナインコ、バタン類など多くのオウム目鳥に感染します。海外では繁殖場での大量死が問題となっていますが、国内での被害はほとんど報告されていません。しかしこれは国内において幼鳥の死亡原因としてあまり認識されていないことも原因となっている可能性があります。
 発症例の多くは10日から25日齢の幼鳥で致死的な経過を示し、羽毛異常を示す例は、臨床の場でみることは少ないです。
症状  ウイルスの暴露により多くの鳥が感染しますが、成鳥のほとんどは一時的なウイルス血症を起こすのみで、発症するには至らないことが多いです。
 セキセイインコの幼鳥が発症した場合、異常羽毛の発現、皮膚の変色、腹部膨 大、腹水の貯留、肝壊死と散在性の出血を伴う肝肥大、小脳感染による頭振などがみられ、致死的な経過をとります。すべての鳥が死亡するわけではなく、生存した個体においてはPBFDに類似する羽毛異常がみられ、特に風切羽と尾羽の欠損や未成長がみられます。
 コザクラインコ、ボタンインコにおいては1歳齢まで感染の影響を受けます。しかし多くの羽毛異常発現症例ではPBFDの同時感染を起こしており、徴候の発現がBFDによるものなのかの判断は困難です。
診断  血液やクロアカスワブを検体とした遺伝子検査(PCR)を行います。
治療  幼鳥の発症例で、腹部膨大、腹水の貯留、肝肥大、頭振などの症状がみられた場合は予後不良です。
 羽毛異常は、PBFDとの混合感染がある場合がほとんどなので、PBFDの治療に順じます。
 無症状個体に陽性が検出された場合は、一過性のウイルス血症であるため、3ヵ月後に再検査を行います。通常は治療の必要はなく陰転しますが、キャリアとなる場合もあります。


細菌性皮膚炎
原因  主にブドウ球菌が皮膚に感染することが原因です。
発生  多くの飼い鳥にみられます。
症状  掻痒が強く、感染部位を毛引き、自咬します。常に皮膚を齧っている場合には、皮膚は潰瘍化し、時に出血します。
診断  多くの場合、自咬症を伴いますが、皮膚炎による自咬なのか、自咬することによって皮膚炎が起こっているか鑑別するのは困難です。
 細菌を検出するには、皮膚の拭い検体または皮膚の培養を行いますが、通常は症状による暫定診断で治療を開始します。
治療  エリザベスカラーを装着し、毛引きおよび自咬を防ぐことが、最も重要です。感染に対しては抗生物質を投与します。


真菌性皮膚炎
原因 Trichophyton、Microsporum、Candidaなどの皮膚、嘴への感染が原因です。
発生  多くの飼い鳥にみられますが、特にブンチョウに多くみられます。
症状  落屑(白いカサカサした物)や皮膚の黄色肥厚を伴う脱羽、嘴の部分的膨隆や変形がみられます。時に肉芽腫性皮膚炎をおこし、腫瘤を形成することがあります。
p4-15_img03.jpgp4-15_img04.jpg 
診断  患部を掻爬し、直接鏡検を行い糸状菌および分生子、酵母様真菌の検出を行います。しかし皮膚から採材される量は少ないため、検出できないことも多いです。
 患部を掻爬した検体を、真菌培養に出して検査することもあります。
治療  抗真菌剤の内服および外用を行います。
予後  真菌症は、なかなか治りにくく、再発しやすい病気です。根気よく治療する必要があります。


鳥クラミジア症
原因  Chlamydophila psittaciの慢性感染による肝機能障害が原因となり、嘴形成不全がみられることがあります。
発生  難治性のクラミジア感染は、オカメインコやコザクラインコに時折みられます。
症状  感染初期は、呼吸器症状がみられますが、投薬により呼吸器症状が改善しても、肝疾患症状が消えず、慢性肝疾患の経過をたどると、嘴の過長、脆弱化がみられるようになります。
診断  糞便および血液の遺伝子検査(PCR)を行い、クラミジアの検出を行います。しかし呼吸器症状が消失後は、クラミジアの排泄はみられないこともしばしばあります。
 レントゲン検査により肝肥大、脾臓の腫脹がみられます。
 生化学検査によりAST、GGT、LDH、TCHO、総胆汁酸の上昇がみられます。
治療  初期の呼吸器症状がある場合は、抗生物質の投与を行います。抗性物質は、45日間投与しますが、呼吸器症状が消失しない場合には、45日以上投与することもあります。
 肝機能障害に対しては、肝庇護剤、利胆剤を投与します。
 嘴の変形がある場合には、定期的に整形を行います。


疥癬症
原因  センコウヒゼンダニの感染によって起こります。発症は、免疫力が関与していると言われており、免疫力が低下すると発症しやすくなります。
発生  主にセキセイインコにみられます。まれにブンチョウやオカメインコにもみられます。
症状 p4-15_img05.jpg 嘴や口角、眼瞼、脚に白色の痂皮(かさぶた)が形成され、強い痒みを伴います。重度の症例では、嘴が脆弱化し、変形し過長します。
診断  典型的な症状から暫定診断可能ですが、確定診断には痂皮を掻爬し、顕微鏡で虫体を確認します。
治療  駆虫薬を塗布します。徐々に痂皮が取れ、痒みが減少していきます。嘴が重度に変形いた場合には、定期的に整形を行っていく必要があります。
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