羽毛、嘴の異常

ここでは毛引き症以外の脱羽、羽毛変色、羽毛形成不全および嘴形成不全を主徴候とする病気について解説します。これら症状を異常と認識するには、正常な羽毛の解剖や機能、鳥種およびその品種における正常な羽毛の色や形状、配列を覚えておかなければなりません。これらに関しては様々な成書、実用書に記載されているのでそれらを参照して頂きたいと思います。

1. 羽毛および嘴異常の臨床症状

(1) 脱羽

 脱羽は羽毛が欠落していることです。脱羽が毛引きをしているのか、他の原因で脱落したのかを鑑別するには、鳥が羽根を引抜く行動がないかをよく観察する必要があります。毛引きの場合には、正常な羽毛だけでなく、新生羽が床に落ちていたり、ちぎられた新生羽の羽軸が羽包に残り、時には出血を伴うこともあ ります。また頭部は毛引きできないため、通常生えそろっています。

(2) 羽毛変色

 羽毛変色はセキセイインコ、オカメインコ、コザクラインコによくみられます。
 セキセイインコでは緑色が黄色に、青色が白色に、ケンソン種では青色が黄色に変色します。
 オカメインコでは黄色に変色することが多いです。ホワイトフェイス種では白色に変色 しますが、判断が難しく、アルビノ種では変色の確認は困難です。
 コザクラインコでは、緑色が赤色または黄色に変色することが多いです。

(3) 羽毛形成不全

 羽毛形成不全とは、羽毛が正常に成長・発達しないものをいいます。羽毛形成不全には、羽軸壊死による未成熟羽毛、羽軸内血液凝固、羽軸棍棒化、ハタキ化、ダウンフェザーの伸長、風切羽および尾羽が細くなる 、ストレスラインなどがあります。いずれも羽毛にまとまりがなくなり、みすぼらしい様相とな ります。

(4) 嘴形成不全

 嘴形成不全は、嘴の過長、脆弱化、横または縦のストレスライン、変色や出血班などがみられるものをい います。多くは肝機能障害や高脂血症によって起こります。

2.羽毛、嘴異常の鑑別診断

羽毛、嘴異常の原因には、感染性と非感染性の2つがあります。感染性疾患には細菌感染、ウイルス感染、真菌感染、クラミジア感染、寄生虫感染があり、非感染性疾患には肝臓疾患、内分泌疾患、栄養性疾患があります。
 羽毛、嘴異常の鑑別診断は、他に特徴的な徴候を伴っていることが多く、また好発鳥種も決まっているため、比較的容易です。

3.外貌からの鑑別診断(ファーストステップ)

(1) 脱羽

 脱羽は、PBFD、BFD、皮膚真菌症、甲状腺機能低下症、栄養性羽毛形成不全などによって起こります。
 PBFD、BFD、栄養性羽毛形成不全は類似していることがあります。これらはセキセイインコに好発し、徐々にあるいは進行性に脱羽します。鑑別には遺伝子検査を行いウイルスの有無を確認します。また栄養性の場合は、脱羽した後すぐに発羽することが多いです。
 皮膚真菌症はブンチョウに好発し、皮膚の白色落屑または乾酪性の黄色病変がみられ、掻痒を伴います。
 甲状腺機能低下症はブンチョウ、セキセイインコに好発し、原発性の機能低下症ではなく、ヨード不足による栄養性のものが多いと考えられます。ブンチョウの脱羽は頭部に発生することが多く、特に嘴基部、頬部、後頭部、下顎部が薄羽となります。また、ブンチョウの脱羽は、性ホルモン分泌過剰も関与していると考えられており、雄雌共に持続的に発情していると脱羽することが多いです。

(2) 羽毛変色

 羽毛変色は、脂肪肝症候群、甲状腺機能低下症、栄養性羽毛形成不全でみられます。
 脂肪肝症候群はオカメインコ、セキセイインコ、コザクラインコに好発します。特にオカメインコの黄色羽毛症候群(Yellow Feather Symdrome)がよく知られています。羽毛異常の原因は肝機能障害ですが、なぜ変色するのかは不明です。
 甲状腺機能低下症はセキセイインコ、オカメインコ、ブンチョウに好発します。しかしブンチョウでは羽毛変色はみられません。セキセイインコやオカメインコで顕著に変色がみられますが、代謝低下による肥満は脂肪肝症候群に発展するため、この2つの疾患は密接な関係があります。
 栄養性羽毛形成不全による羽毛変色は主にセキセイインコの若鳥にみられ、成長期の蛋白質不足あるいは消化器疾患による栄養吸収不全が原因です。体躯を覆う正羽に縁取りをしたような変色がみられます。

(3) 羽毛形成不全

 羽毛形成不全は、PBFD、BFD、脂肪肝症候群、栄養性羽毛形成不全でみられます。
 PBFDはセキセイインコに好発し、コザクラインコに時折みられます。BFDはセキセイインコに発生しますが、発症し臨床徴候を呈することはまれです。PBFDとBFD、栄養性羽毛形成不全の羽毛異常は類似しており、羽軸壊死による未成熟羽毛、羽軸内血液凝固、羽軸棍棒化、羽毛のねじれ、ストレスラインなどがみられます。
 脂肪肝症候群では風切羽および尾羽が細くなる、ハタキ化、ダウンフェザーの伸長などの徴候がみられます。

(4) 嘴形成不全

 嘴形成不全はPBFD、鳥クラミジア症、疥癬症、脂肪肝症候群、栄養性嘴形成不全でみられます。
 PBFDでは特に上嘴が過長し、脆弱化します。またストレスラインや破損もみられることがあります。
 鳥クラミジア症はオカメインコに好発します。この疾患の主症状は呼吸器症状ですが、慢性感染では肝機能障害による嘴形成異常がおこることがあり、上嘴の過長、出血斑などがみられます。
 疥癬症は、ヒゼンダニの嘴組織内への感染によって起こります。嘴および基部皮膚組織に白色痂皮が付着し、嘴が過長します。同時に脆弱化、ストレスラインなどがみられます。
 脂肪肝症候群では、上嘴の過長、脆弱化、出血斑などがみられます。
 栄養性嘴形成不全では、上嘴の過長、脆弱化、ストレスラインなどがみられます。

4.掻爬検査による鑑別診断(ファーストステップ)

掻爬検査とは、皮膚を引っ掻いて得られた物を顕微鏡で見る検査です。掻痒や皮膚炎がある場合に行います。菌糸や分生子(胞子)がみられた場合は、真菌性皮膚炎が疑われます。セキセイインコの顔面にできる白色の痂皮の掻爬検査によって、疥癬症が診断できます。ブンチョウでは、皮膚にダニが見つかることがあります。

5.血液検査による鑑別診断( セカンドステップ)

血液検査は、非感染性の羽毛、嘴異常を診断するのに有用な検査です。

総白血球数
 総白血球数およびヘテロフィルの上昇は、 感染・炎症が存在する可能性を示唆しており、特に鳥クラミジア症の診断に有用です。慢性のPBFDやBFD、皮膚炎では上昇することは稀です。

肝機能
 鳥の肝機能を評価する際に測定される生化学項目には、AST、GGT、LDH、総胆汁酸、CPK、総コレステロールがあります。
 鳥は肝障害時初期にはLDHが上昇し、中期以降はASTが上昇します。AST、LDHともに特異性、感受性が高いわけではないですが、上昇の際には常に肝疾患を疑わなければなりません。
 CPKは、骨格筋、心筋、神経の障害を示す値ですが、AST、LDHの上昇時の由来の鑑別として測定されるべきです。
 GGTは、胆道疾患時に上昇し、特異性が高いが感受性は低いです。
 総胆汁酸は、最も純粋な肝機能を示しており、AST、LDHの上昇がなくても、総胆汁酸の上昇によって肝疾患を診断できます。
 総コレステロールの上昇は、コレステロールを多く摂取することの少ない鳥では、食事性は考えられず、多くは排泄障害による上昇です。肝酵素の上昇がみられなくても総コレステロールの上昇がみられた場合は、常に肝疾患を疑わなくてはなりません。

甲状腺ホルモン
 甲状腺ホルモン(T4)の減少は甲状腺機能低下症を診断できます。

6.遺伝子検査による鑑別診断( セカンドステップ)

PBFD、BFDの診断には、遺伝子検査が必要になります。PBFDは、血液検体を用いれば通常1回の検査で診断することができます。BFDは、血液や糞便、クロアカスワブ検体を用いますが、1回の検査では必ずしも診断できるとは限りません。
 肝臓疾患に鳥クラミジア症が関連していないかを調べるためにも遺伝子検査が必要になります。鳥クラミジア症も血液や糞便、クロアカスワブ検体を用いますが、1回の検査では必ずしも診断できるとは限りません。

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