胃の病気

メガバクテリア症
原因 p4-9_img02.jpg 原因菌:マクロハブダス・オルニトガスター(Macrorhabdus ornithogaster
メガバクテリアは、グラム陽性の大型桿菌状微生物であり、酵母の一種で、アナモルフ(無性型)の子嚢菌類に新しい属として提案されています。鳥の胃の中に住む酵母であることから、AGY(Avian Gastric Yeast)とも呼ばれています。感染部位は胃であり、特に中間帯周囲に感染し、重度の胃炎や胃拡張を起こ します。
伝播  伝播は水平感染であり、一般的には親鳥が雛鳥に給餌する際に吐き戻した食物の中のメガバクテリアを摂取することによって感染 します。その他では、同居している感染鳥の糞便中に排泄されたメガバクテリアを経口摂取することによって感染します。
発生  10年以上前よりセキセイインコに広く蔓延しており、特に幼鳥の被害が大きい です。感染する鳥種は多く、コザクラインコ、ボタンインコ、オカメインコ、ブンチョウ、キンカチョウ、カナリヤ、ニワトリ、 ダチョウなどに見られます。
症状  症状は、嘔吐・吐出のほか、全粒便 (穀粒がすり潰されていない状態)、軟便や下痢、血便などがみられます。食欲が低下し、餌は殻を剥くだけで、飲み込まないこ ともあります。
診断  顕微鏡による糞便検査にて、メガバクテリアの検出を行 います。糞便への排泄量と症状の強さには、必ずしも比例関係があるわけでは ありません。またメガバクテリアは胃粘膜内に侵入するため、排泄量が少なくても、必ず対処しなければなりません。
治療  メガバクテリアの治療には抗真菌剤が有効です。補助的に粘膜抵抗強化剤(胃薬)、胃腸機能調整剤(吐き気止め)、抗生物質なども併用します。
予後  発見が早ければ治ることが多いですが、発見が遅れ、胃の障害が大きいと メガバクテリアが糞便中から消失しても症状が治らない事もあ ります。中には慢性胃炎から胃腫瘍に発展したと考えられる症例も多く見つかっています。
 糞便中にメガバクテリアが消失しても、胃粘膜内に侵入して残っていることも多いため、長期間の投与が必要です。


カンジダ症
原因 原因菌:Candida albicans、Candida sp.
 カンジダは鳥の消化管の常在菌です。通常は少数のため問題とならなりませんが、ご飯やパン、お菓子などの熱変性したデンプンの摂取、ビタミンA欠乏などによる免疫力の低下、抗生物質による菌交代症によって増殖すると病原性を発揮 します。通常問題となるのはCandida albicansがほとんどです。そ嚢または胃に感染すると症状が発現します。
 多くの場合が、熱湯を使用して作った挿し餌を長期間与えられていることが原因となります。
発生 挿し餌中の若鳥、特にオカメインコ、セキセイインコ、ブンチョウにみられます。
症状  糞便中にカンジダがみられても、そ嚢または胃の粘膜に感染していなければ無症状です。しかし粘膜に感染し炎症が起こると嘔吐・吐出のほか、軟便や下痢、血便などがみられます。
診断 そ嚢 液検査、糞便検査にてカンジダの酵母または仮性菌糸を検出します。
p4-9_img03.jpgp4-9_img04.jpg
治療  カンジダの治療には抗真菌剤を使用します。補助的に粘膜抵抗強化剤(胃薬)、胃腸機能調整剤(吐き気止め)、抗生物質なども併用します。


胃腫瘍
原因  今のところ不明ですが、過去メガバクテリアに感染し、治療歴のあるセキセイインコに多いことから、メガバクテリアによる慢性炎症が疑われます。またストレスやビタミンA欠乏症も発症の要因となっている可能性があります。
発生  主にセキセイインコによくみられます。
症状 p4-9_img05.jpg ほとんどの症例で嘔吐・吐出がみられますが、中には吐き気もでない例もあります。腫瘍といっても多くの場合、粘膜に潰瘍病変(図参照)を作るのみで腫瘤が出きることは少ないです。潰瘍病変からは出血することが多く、その場合黒色便(血便)がみられます。また筋胃の機能を失うと、餌をすり潰すことができなくなり、糞便中に穀粒がでてきます。胃の通過が悪くなると、胃液がそ嚢内に逆流し、ドロドロの液体を吐出するようになり、口から泡を吹いたり、頭部がベタベタになったりします。
診断 p4-9_img06.jpg そ嚢液検査、糞便検査にて病原体が検出されないことが多い。
レントゲン検査にて腺胃または筋胃が拡張していることが多い。(図参照)
 生前診断は不可能であり、症状と検査結果から本症を疑います。
治療  腫瘍の根本治療は不可能であり、疑われた場合は対症療法を行います。
使用される薬剤は、胃粘膜保護剤、吐き気止め、止血剤、抗生物質、抗真菌剤、鎮痛剤などです。
 吐き気がひどく、食欲がない場合には入院治療が必要となります。


PDD(腺胃拡張症)
原因  PDD(Proventricular Dilatation Disease)は、 ボルナウイルスによって引き起こされる感染症です。腺胃の神経節炎による麻痺により腺胃平滑筋の弛緩が起こり、腺胃が拡張する病気です。
発生  多くの インコ・オウム類にみつかっていますが、ヨウム、バタンオウム、コンゴウインコ類、オカメインコなどに時折発生がみられます。
症状  PDDは末期まで症状を出さないことが多く、嘔吐・吐出がみられた時にはかなり腺胃が拡張していることが多いです。腺胃が拡張する原因が消化管の神経麻痺であるため、通過障害も多くみられ、糞便量が減少します。この他にも脚の麻痺や痙攣、毛引き症がみられることもあります。
診断  レントゲン検査にて腺胃が拡張しているのを確認します。(図:腺胃が拡張したヨウム)
p4-9_img07.jpgまた血液検査にてCPKの上昇がみられるのも特徴的です。
 PDDの診断は、今までは組織内の神経節炎の確認によって行われていました。病変はそ嚢にもでるため、海外では麻酔下にてそ嚢のバイオプシ ー(一部切り取る)を行い、病理検査を行っていました。しかし近年、PDDがボルナウイルスであることが判明したことから、今後PCR(遺伝子検査)で診断できるようになる可能性もあります。しかし今のところ有効な検体は分かっておりません。
治療  PDDの根本治療は不可能であり、疑われた場合は対症療法を行います。
 使用される薬剤は、神経節炎を抑えるために非ステロイド系抗炎症役を用います。その他に対症療法として胃粘膜保護剤、消化器機能調整剤、抗生物質、抗真菌剤なども用いられます。
 食事は食べるようであれば、PDD用処方食を用います。


クリプトスポリジウム症
原因  寄生虫の一種で、原虫に分類されるクリプトスポリジムが胃に感染することによって起こります。
発生  コザクラインコ、特に5歳以上になってから発症することが多いです。
症状  発症する前は無症状ですが、発症すると慢性頑固な吐き気、嘔吐がみられます。吐き気、嘔吐は、朝にみられることが多く、粘稠性の高いネバネバした液を吐き出します。食欲は低下し、徐々に衰弱していきます。
 吐物を誤嚥することにより、肺炎を起こすことがあります。
診断 p4-9_img08.jpg 糞便のショ糖浮遊法検査により、クリプトスポリジウム のオーシストを検出します。
 


 レントゲン検査では、中間帯(腺胃と筋胃の間)の拡張がみられることが多いです。(レントゲン写真参照)



p4-9_img09.jpgp4-9_img10.jpg

治療  人を含め多くの動物に感染するクリプトスポリジウムがみつかっていますが、未だ駆虫薬は開発されていません。人では、効く可能性がある薬剤として、ニタゾキサニドとパロモマイシンが使用されますが、コザクラインコの治療にもこれらを用います。しかし投薬により、完全に駆虫することはできず、投薬中は糞便への排泄の減少がみられますが、投与を中止すると、また排泄量が増えてきます。
 よって胃腸薬や吐き気止め、抗生物質、抗真菌剤など対症的な薬剤を使い、胃炎吐き気をコントロールします。
予後  発症すると完治することはないので、徐々に衰弱します。


異物
原因  石や装飾品、ボタン、針金、ゴム、糸などの異物を誤飲 することがあります。
発生  200g以上の大型オウム目鳥、ニワトリ、ウズラで発生が多い。
症状  異物が胃腸内に停滞することによって、嘔吐 や吐き気がみられます。胃腸の不完全閉塞や完全閉塞を起こすこともあります。
診断 p4-9_img11.jpg レントゲン検査にて胃腸内の異物を確認しますが、石や金属を含むものまたは大型の異物以外は写ってきません。
(図:針金を飲んだコバタンのレントゲン写真)
治療  鳥は哺乳類と異なり筋胃内に硬いものを停留させるため、1日経てば便に出るということはありません。毒性の無い小型の異物であれば経過観察 によって自然排泄を待つ場合もありますが、閉塞を起こしている場合には、腺胃切開術または腸管切開術によって異物 を摘出します。


グリットインパクション
原因  グリットの過食 が原因で起こります。グリットとは砂のことで、多くの鳥類は、2つ目の胃である砂肝(筋胃)にグリットを停留させています。餌を丸呑みしている鳥たちは、このグリットと一緒に筋肉でできた胃で餌をすり潰しているのです。飼い鳥の餌の中でグリットになり得るものには、ボレー粉、塩土、カットルボーンの硬い部分、焼き砂、ペレットに含まれる炭酸カルシウムの粒などがあります。
発生  コザクラインコ、ボタンインコ、オカメインコに多くみられます。
症状  嘔吐、吐き気 がみられ、通過障害がみられることもあります。
診断 p4-9_img12.jpg レントゲン検査にて筋胃 内のグリットの充満を確認します。
(図:筋胃内にグリットが充満したオカメインコのレントゲン写真)
治療  グリットの給餌 を中止します。一度なった鳥は、またなる可能性が高いため、グリットは与えないようします。推奨される鉱物資料は、カットルボーンの柔らかい部分です。
使用される薬剤は、胃粘膜保護剤、消化器機能調整剤などです。

 

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