持続発情に関連する問題点

 持続発情が根本的な原因となっている病気は、数多くあります。よってその発症機序を理解しなければ、2次的に発現してきた病気に対しての対症療法だけとなり、根本を見逃してしまうことになります。ここでは持続発情によって引き起こされる病気とその発症機序について解説します。

雌の持続発情に関連する問題点

  1. 飼育環境が発情しやすい状態であると鳥は持続発情状態となり、エストロジェン(発情ホルモン)が持続的に分泌され、高エストロジェン血症を起こします。
  2. エストロジェンの影響で雌鳥は繁殖の欲求が強くなり、巣作り行動、巣篭もり行動といった発情兆候が多くなり、また攻撃的な性格に変化することもしばしばみられます。そして繁殖の欲求が満たされないと、毛引き症の原因にもなります。
  3. エストロジェンの影響で、腹部の筋肉が弛緩して垂れ下がり、そして常に卵巣が発達して卵黄が形成され、慢性的に産卵をします。この状態が続くと、卵塞(卵詰まり)を起こしたり、カルシウムの貯蔵量が減少して軟卵を産んだり、低カルシウム血症を起こして虚脱することがあります。さらには腹壁ヘルニア卵管疾患卵巣疾患卵黄性腹膜炎総排泄腔脱卵管脱骨軟化症などの重大な病気が引き起こされます。
  4. 卵黄の材料である蛋白質は、肝臓で産生されます。この肝臓での蛋白質産生の命令をしているのもエストロジェンです。持続的な高エストロジェン血症によって、常に肝臓から血液中へ蛋白質が放出されることになります。これによって肝臓が疲労し、肝機能障害が起こってきます。さらには肝機能障害と組織蛋白が枯渇することによって、羽毛の変形や変色、嘴や爪質低下による過長、血液凝固不全による嘴・爪への出血班形成、肺出血による呼吸困難などがみられるようになります。
  5. 鳥は卵を続けて産むために骨の中にカルシウムを蓄える機能を持っています。これもエストロジェンの作用によって起こります。高エストロジェン血症によって骨に過剰にカルシウム沈着を起こした状態を多骨性過骨症(Polyostotic Hyperostosis)と言います。カルシウムは常に蓄えられるばかりでなく、産卵する、しないにかかわらず常に骨への沈着と放出を繰り返しています。これは全身の骨で行われ、この状態が継続すると骨に変形が出てきます。特に関節面に変形が出ると変形性関節炎が引き起こされ、疼痛や麻痺によって飛翔困難歩行異常が見られるようになります。また脊椎に変形や関節炎が出ると、両脚の麻痺排便困難がみられるようになります。

雄の持続発情に関連する問題点

  1. 飼育環境が発情しやすい状態であると雄鳥も持続発情になります。
  2. これによって過剰な生殖行動の欲求が生まれ、特にインコ・オウム類では交尾行動を繰り返します。止まり木ですることを覚えた場合、1日に何度も擦り付けるため、排泄孔周囲が擦過傷で出血したり、羽毛が擦り切れたりすることもあります。またこの生殖行動の欲求が満たされない場合、毛引き症の原因になる可能性もなります。
  3. 同時に過剰なディスプレイ行動もみられる。これが問題になるのはオウム目鳥の特徴である発情吐出(図13)である。しかし常にペアとなるメスがいるわけではないので、多くの場合オスは、鏡などの光る物、おもちゃ、餌箱、止まり木、自分の足などお気に入りの場所を見つけ吐きつける。またメスがいた場合、食べさせすぎてメスが肥満してしまうこともある。吐いて時間が経ったものをまた食べるのを繰り返していると、カンジダ症の原因ともなる。
  4. 発情の持続は、常に精巣が発達していることを意味する。鳥は発情時と非発情時において精巣の大きさが何十倍〜何百倍も異なる。発達した精巣は足の神経である坐骨神経を圧迫することがあり、これによって足が不完全麻痺を起こすことがある。これは主にセキセイインコに見られる。
  5. 鳥の精巣は哺乳類と異なり体外に出ていない。精巣や精子は熱に弱いため、哺乳類は体の外に出るよう進化したが、鳥は体外にあったのでは飛翔に邪魔になるため、腹腔内に存在する。そこで鳥は精巣を気嚢と接することによって、呼吸で冷却している。しかし発情によって常に発達した精巣は冷やされにくくなる。セキセイインコのオスには精巣腫瘍(図14)が非常に多く見られる。これは冷やされにくく、常に細胞分裂によって精子を産生している精巣は腫瘍化しやすくなるためと考えられる。



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