栄養素と過不足による病気

 動物が栄養素には、たんぱく質、脂肪、炭水化物、ビタミン、ミネラルの5つがあり、5大栄養素と呼ばれています。この5つの栄養素をバランスよく取らなければならないというのは、皆さんご存知だと思います。ではこれら5大栄養素とはどんなものなのでしょうか。そして多く摂り過ぎたり、不足したりするとどうなるのでしょうか?この項では、栄養素がそれぞれどのような役割を果たし、そして過不足があるとどのような病気になってしまうのかを説明していきます。

(1) たんぱく質

 たんぱく質は、筋肉、皮膚、内臓、血液、羽毛、嘴、爪など体を構成しているほとんどの部分を構成する成分であり、体はたんぱく質でできているといえます。たんぱく質は、アミノ酸から構成されています。アミノ酸には多数の種類があり、中でも体内で合成できず、必ず食物から摂らなければならないものを必須アミノ酸といいます。鳥の必須アミノ酸は、一般的にアルギニン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、バリン、トリプトファン、スレオニンといわれています。またグリシン、ヒスチジン、プロリンも体内で十分に合成が出来ないため、必須といわれています。
 動物性、植物性を問わず食物には、たんぱく質が含まれています。私たち人間は、主に肉類、魚介類、卵、大豆製品、乳製品からたんぱく質を摂取しています。では鳥はというと、普段食べている種子類に含まれるたんぱく質しか摂取していません。種子類には10%前後のたんぱく質が含まれています。この量は、鳥の要求量を満たしてはいます。しかし換羽期や成長期には食物中に約20%のたんぱく質が必要であるといわれており、種子だけではこの量を満たすことはできません。また必須アミノ酸量はどうかというと、実はこれも種子類だけでは、普段の要求量でさえ満たすことができていません。
 それでは、たんぱく質や必須アミノ酸が不足するとどうなるのでしょうか。たんぱく質の不足は主に成長期、つまり雛鳥の時に起こります。成長期には、食物中に約20%のたんぱく質が必要です。不適切なあわ玉のみで育てたり、あるいは1日の摂取量が足りないと、成長の遅延や自立の遅れがみられるようになります。必須アミノ酸の不足は種子食のみで飼育していると起こります。不足すると代謝の低下によって肥満が起こりやすくなります。また鳥種によっては羽毛、嘴、爪の形成不全を起こすことがあります。
 たんぱく質の過剰も起こることがあります。これはペレットが主食になっている場合に、普段からたんぱく質の多いタイプ(ブリーダー、ハイポテンシイなど)を常食させることによって起こります。たんぱく質の過剰は、肝疾患、腎疾患、腫瘍の発生率を上昇させる可能性があります。

(2) 脂肪

 脂肪も体内の構成成分としても大切な働きをしています。体内では、コレステロールやリン脂質が生体膜の主要構成成分として使われたり、リポ蛋白という形で、脂肪の体内での運搬体として重要な働きをしています。また、脂溶性ビタミンであるビタミンA・D・E・Kの吸収にも必要とされます。 脂肪は摂りすぎると体内に脂肪として貯えられ、肥満の原因となりますので、摂取させる際にはその量と質が問題となってきます。量はもちろん過剰摂取を避けるために含有量を知るということですが、質というのは含有する脂肪酸の種類ということです。脂肪は腸から吸収される際に中性脂肪という形で体内に取り込まれます。中性脂肪がエネルギーとして使われる場合には、分解されてグリセリンと脂肪酸になります。この脂肪酸は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の3つに分けられます。 これらはそれぞれ性質や作用が異なりますが、質として注目したいところは、不飽和脂肪酸のなかでも必須脂肪酸と呼ばれるリノール酸、α−リノレン酸、アラキドン酸の含有量です。必須脂肪酸は体内で合成できないため、これが多く含まれる食物を知る必要があります。
 脂肪は、ほとんどの食物に含まれていますが、食物の種類によってかなり含有量が異なります。私たち人間は、豚や牛の脂、バター、サラダ油など日常的に多くの脂肪を摂取しています。では鳥はというと、種子類や種実類に含まれている脂肪を摂取しています。種子類の脂肪含有量は2〜5%程度で、これは要求量を丁度満たす量となっています。しかし種実類には25%程度の脂肪が含まれており、常食した場合、多量に脂肪を摂取することになります。ここで問題となるのが質と量です。種子類には適量の脂肪が含まれていますが、必須脂肪酸の含有量が少ないです。逆に種実類は、多量の死亡が含まれていますが、その分必須脂肪酸も多く含まれています。このことから種実類は常食をさせてはいけないが、必須脂肪酸を補う目的で、適量を与えると良いということが分かります。
 脂肪の摂取過剰は、第1に肥満と高脂血症を引き起こします。このことから2次的に脂肪肝 症候群が引き起こされます。脂肪肝 症候群によって肝機能障害が引き起こされると、羽毛の変色(黄色化や白色化)、羽毛の変形、ダウンフェザーの伸長、嘴・爪の過長と出血斑などがみられるようになります。この他にも、心疾患や動脈硬化、脂肪沈着部位の毛引きや自咬などがみられることもあります。
 必須脂肪酸の不足は、皮膚炎、腎障害、小腸繊毛の形成障害などを引き起こすことがあります。特に皮膚状態の悪化は、毛引き症や自咬症に発展する可能性もあります。

(3) 炭水化物

炭水化物は、最も大切なエネルギー源です。炭水化物は、消化によってブドウ糖やガラクトースなどの単糖類に分解され、小腸から吸収されて肝臓に入り、多くはグリコーゲン(エネルギーの貯蔵庫)として肝臓に貯えられ、一部はブドウ糖として血液中に入ります。 空腹時や運動時には、血液中のブドウ糖だけではエネルギー源として不足するので、肝臓に貯えられたグリコーゲンが分解されて、血糖値を一定に保ちます。血糖値や体温の高い鳥は、ブドウ糖の消費が激しいため、常に食物を摂取しています。糖質は摂りすぎると脂肪として体内に貯えられるため、肥満の原因になるため食べ過ぎはよくありません。

(4) ビタミン

 ビタミンは、生体の機能を正常に維持する為にたんぱく質、脂質、糖質の栄養素の体内における代謝を円滑に行う為に必要な栄養素であり、体の調子を整えるなど、体内の潤滑油のような働きをしています。ビタミンには、大きく分けて脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンの2つがあります。脂溶性ビタミンは、脂質に溶けて吸収されるのですが、脂質の取りすぎは、余分な脂質が吸収されず、排泄されると共に脂溶性ビタミンも排泄されるため、逆に吸収が悪くなります。また脂溶性ビタミンは、過剰に与えると中毒症を引き起こすことがありますので注意が必要です。

脂溶性ビタミン

1.ビタミンA
ビタミンAには、動物性食品に含まれるレチノールと緑黄色野菜に含まれ体内でビタミンAに変わるβ−カロチンがあります。ビタミンAは皮膚や粘膜を正常に保ち、夜盲症、視力の低下を防ぎます。またガンの予防にも効果があると言われます。種子類、種実類にはほとんど含まれていません。
 不足すると皮膚、口腔粘膜、呼吸器、泌尿器などの障害を起こし、細菌感染に対する抵抗力が低下します。長期的な欠乏は、腎尿細管粘膜の障害を起こし、痛風の原因となります。
 過剰になると元気食欲の低下、嘔吐、骨障害、脂肪肝を起こすことが知られています。ビタミン剤の過剰投与には注意が必要です。

2. ビタミンD
ビタミンDは、カルシウムの働きを調節するビタミンです。カルシウムやリンの腸管吸収を促し、骨形成を促進する働きをします。紫外線を浴びることによりビタミンDは、体内で7‐デヒドロコレステリンから合成することができますが、多くの家庭で日光浴は十分にできていないため、不足しがちになります。
 不足すると幼若鳥では、骨の成長障害を起こしクル病を起こします。また不足した状態での過産卵は骨軟化症を引き起こします。
 過剰になると、血中のカルシウム濃度が高くなるために、腎臓にカルシウム沈着が起こり、腎 症を引き起こします。また動脈にカルシウム沈着が起こり動脈硬化を起こすこともあります。

3. ビタミンE
ビタミンEは、老化の原因と考えられている過酸化脂質がつくられるのを妨げる働きを持つビタミンです。また血行を促進し、生殖腺の発達を促進します。種子・種実類には要求量を必要なビタミンEが含まれていますので、不足することはまれです。
 欠乏すると、白筋症による筋萎縮によって歩行異常が起こるといわれています。過剰症は、臨床上認められていません。

4. ビタミンK
 ビタミンKは、血液凝固因子の合成に働くビタミンで、緑黄色野菜に含まれるK1と微生物による合成から作られるKがあります。種子・種実類には含まれており、また腸内細菌が合成していますので、通常不足することはありません。しかし脂肪の過剰摂取、消化不良による脂肪吸収不全、抗生物質投与による正常腸内細菌叢の減少が起こると欠乏症が起こります。欠乏すると、血液が固まり難くなり、出血しやすくなります。また打撲によって内出血を起こしやすくなります。

水溶性ビタミン

1. ビタミンB1
ビタミンB1は、糖質が分解されエネルギーに変換される際に働く酵素の補酵素としての役割を持っています。種子類には含まれており、また腸内細菌が合成していますので、通常不足することはありません。しかし幼鳥期にビタミンB1が不足した状態で、炭水化物に偏った挿し餌を与えると欠乏症が起こります。欠乏症は、多発性神経炎(脚気)を引き起こします。

2. ビタミンB2
 ビタミンBは、脂質代謝および糖質代謝に関わっています。 脂肪摂取量が多くなると必要量が多くなります。
 不足すると口内炎・口角炎になりやすくなります。また幼鳥期の不足は、趾曲りを引き起こします。

3. ナイアシン
 ナイアシンは、糖質・脂質・蛋白質の代謝に不可欠なビタミンです。不足すると、舌の炎症や食欲不振などの症状がでることがあります。

4. ビタミンB6
ビタミンBは、蛋白質の代謝と関係するビタミンです。蛋白質は体内でアミノ酸に分解され、必要な蛋白質に再合成されますが、この時働くのがビタミンBです。 また脂質代謝にも関係し、リノール酸やリノレン酸を細胞膜に必要なアラキドン酸に変える働きをしています。 それ以外にも赤血球のヘモグロビンの合成、免疫機能を正常にするためなどにも働いています。

5. ビタミンB12
ビタミンB12は、葉酸と協力して赤血球のヘモグロビンの合成を助けます。不足すると悪性貧血を起こします。
 また不足は正常な細胞分裂の障害または遅延を起こし、たんぱく質合成の障害を起こします。その結果、成長の遅延、神経障害、羽毛形成不全、体脂肪蓄積などを起こします。

6. 葉酸
ビタミンB12と協力して、造血に働くビタミンです。葉酸が不足すると赤血球や白血球の産性が悪くなり、その結果悪性貧血が起こります。

7. パントテン酸
パントテン酸は、コレステロールとの関係が深く、善玉コレステロールを増やし心臓や血管の病気の予防に役立ちます。不足すると脂質代謝異常やペローシスを起こします。

8. ビオチン
ビオチンは、パントテン酸と一緒に酵素を作り、糖質のエネルギー代謝に関与しています。また、脂肪酸やコレステロールの代謝、蛋白質の代謝にも関与しています。

9. コリン
コリンは、血管を拡張させ血圧を下げるアセチルコリンの材料となっています。また細胞膜を作るレシチンは不飽和脂肪酸とリン脂質とコリンが一緒になって作られています。コリンは脂肪肝を防ぎ、肝臓の働きを高めてくる働きもあります。不足により、高血圧、脂肪肝を起こします。

10. ビタミンC
ビタミンCは、コラーゲンの生成に不可欠なビタミンです。コラーゲンは細胞の接着剤として働き血管、各種器官、筋肉を作ります。また抗酸化作用を持ち、ビタミンEと共に活性酸素を除去する働きをしています。その他にも鉄や銅の吸収を助けたり、ヘモグロビンの合成を助けることで、貧血予防にも働きます。

(5) ミネラル

ミネラルは、体の構成部分になったり、機能維持や調子を整える重要な働きを持っています。

1. カルシウム
 カルシウムは骨の構成成分のほか、体液の構成成分、筋肉の収縮、神経の伝達などの重要な役割を持っています。種子・種実類にはほとんど含まれていないため、ボレー粉やカットルボーンなどの鉱物飼料を摂取させる必要があります。
 カルシウムの利用には、リンの摂取量と関係があり、カルシウム:リンが、1〜2:1が最も効率よく利用されます。よってカルシウム摂取過剰にも注意が必要です。
 不足すると、幼鳥期ではクル病、成鳥では過産卵の雌に骨軟化症骨折がみられます。過剰は、他のミネラル、ビタミンの吸収を阻害し、ペローシスの原因になることがあります。

2. リン
リンは、リン酸カルシウムとして、骨の構成成分となります。またリン脂質として、羽毛や嘴の構成成分となります。また血液中ではリン酸塩として血液の酸やアルカリを中和する働きをします。その他、ATPなどの高エネルギーリン酸化合物を作り、エネルギーを貯える働きをします。飼い鳥の食物には十分なリンが含まれており、不足することはありません。

3. マグネシウム
 マグネシウムは、リン酸マグネシウムとしてカルシウムと共に骨に存在します。それ以外にも筋肉、脳、神経に存在しています。不足すると、骨軟化症、高血圧、動脈硬化などが起こりやすくなります。

4. ナトリウム
 ナトリウムは、塩化ナトリウム(いわゆる塩)、重炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウムとして体液中に存在します。細胞の外液の浸透圧を一定に保つために調整する働きをします。種子・種実類、野菜類にはほとんど含まれていません。飼い鳥のナトリウム源としては、塩土があります。しかし過剰摂取する場合は、塩分過剰となるため注意が必要です。
 不足すると精神的不安定となり、毛引き症の原因となります。過剰になると、胃炎、高血圧、動脈硬化を引き起こします。

5. カリウム
 血球や細胞の内液に多く存在しています。ナトリウムと共に細胞内の浸透圧の保持、酸アルカリ平衡の保持に重要な働きをしています。食物中に多く含まれており、不足することはありません。

6. 鉄
 鉄は、赤血球のヘモグロビンの材料となります。食物中に含まれる量で、不足することはありません。ローリー類やキュウカンチョウ、オオハシなどの一部の鳥種は、過剰になるとヘモクロマトーシスを起こします。

7. 亜鉛
 亜鉛は、DNAや蛋白質の合成、免疫機能、生殖器機能に関与しています。また血糖値を調整するインシュリンの合成にも必要なミネラルです。不足はみられませんが、古い亜鉛メッキケージの使用により、過剰症が起こることがあります。過剰になると、性格が攻撃的になり、毛引き症の原因となります。

8. マンガン
マンガンは、カルシウムやリンと同様に骨の石灰化に必要なミネラルです。また関節を丈夫にする結合組織の補酵素としての働きもあります。食物中に不足することはないのですが、カルシウム過剰摂取による吸収不全で欠乏症になることがあります。欠乏により、ペローシスを起こします。

9. ヨード
 ヨードは、甲状腺ホルモンの成分となるミネラルです。種子・種実類、野菜類では必要量を補いことが出来ないため、主食がペレットで無い場合には、必ず補わなければならない栄養素です。不足すると、甲状腺腫や甲状腺機能低下症を起こし、呼吸困難や肥満、羽毛形成不全、換羽不全などを起こします。過剰に与えると、逆に甲状腺への取り込みが悪くなりますので、過剰に補わないよう注意する必要があります。

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